時評子は業務において、カレンダーに展示会の名称・会期・会場を記入しているが、4月中旬時点で既に7月上旬まで同じ文言を追記している「→コロナ×」と…。
本紙が把握している範囲では新型コロナウイルスによる感染症拡大で、2月を機に開催中止・延期ばかりになっている。そんな中で2月下旬に関東地方で開催された製造業関連の展示会では、会場入り口手前でマスクを着用していない来場者向けに配布、入場ゲートには体温が色で表示されるカメラによる確認、消毒スプレーの設置―と主催社としては最大限と思える対策をしていたが、前回(昨年)のような活気はなかった。
仮に4月7日晩に発令された緊急事態宣言の内容以上に、4月下旬から外出自粛・禁止を徹底して、人々が実践した上で運よく感染拡大がなく、感染者・発症者に対処していくだけでも、潜伏期間とされる最大約2週間(半月)を考慮すれば、収束見通しは少なくとも5月中旬までは無理だろう。そして日本国内で新規の感染者ゼロを達成したとしても、海外から第2波、第3波が来るかもしれない。かつてのスペイン風邪も波状的に感染拡大が起こった。国・地域同士で交互に感染させて、いつまでも収束しない可能性も考えられる。そのせいか、時評子が緊急事態宣言発令前に大田区へ取材に外出した時に見た、羽田空港へ着陸する旅客機。航空会社の発着枠を維持・確保する為に乗客ゼロでも飛ばす「ゴーストフライト」であってくれ―、とも思ってしまう。
今回の感染症拡大で延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開催について、組織委員会は既に2021年7月~8月に延期を決定したが、収束の目途も立っていないのに時期尚早としか思えない。展示会は主催が民間企業・自治体に関わらず準備期間を必要とするが、わざわざ2020年夏の開催に合わせ延期・中止・会場変更で調整したスケジュールを、また動かす可能性もある。展示会は空いた会場の埋め合わせで開かれているわけではない。
主催社の運営や会場設営、出展社・来場者の商談・宣伝効果による取引成立、さらに交通・宿泊・会食・土産の買い物だってあるはずだ。展示会は国内の地方同士・海外からの人の往来で、インバウンド需要をはじめ経済効果を生み出している。オリンピック・パラリンピック開催を推進している関係者は、展示会による経済効果を軽視しているとしか思えない。
まず必要なのは日本国内だけでなく世界全体での感染症の収束。そこからオリンピック・パラリンピックがそもそも開催可能か否か検討、時期は?会場は?それによって展示会に関係する業界をはじめ影響を受ける各方面から納得を得て、必要なら補償を進めてからだろう。