2020年の景気は、概ね緩やかな回復傾向で推移していくであろう。昨年の後半では少しばかり失速感が感じられたが、それでも通年では横ばいは維持できた。今年は失速感を早々に脱して成長していくのではないか。
建築分野は、政府も50棟の高級ホテルの増設を目標に示している通り、宿泊施設を中心に再開発が進む。大阪万博へ向けた投資も進み、被災地の復興も進めねばならない。現在、夏のオリンピック施設がどんどん完成しているが、これまで五輪施設の主に外装関係に携わってきた職人たちが全国へ帰ってくるだろう。先日、大阪府は岸和田城の天守閣から街並みを眺めたところ、まだ青いビニールシートが住宅の天井に張り付けられたままの場所が多く見られた。実に2年も経つというのに、まだ復興が完全に済んでいないのだ。ましてや、昨年の台風19号の被害を受けた千葉はさらに広域な被災規模であるし、職人たちが戻ってくれば復興の遅れを取り戻すであろう。これにともなう需要が日本経済を回すはずだ。
もっとも、復興需要という言葉は慎重に用いなければならない。人の不幸で利益を、という意味にならないよう、あくまでも復興に貢献し人々の役に立つことで必然的に伴う経済効果として用いるが、今年この復興需要が経済効果をもたらすことは間違いなかろう。
電機分野は、オリンピック関係では屋内設備で既に需要の真っ只中にある。内装・内設関係の需要はロンドンオリンピックやリオオリンピックの際と同様に直前まで続くだろう。また、製造・工場関係では、工作機械の需要が落ちたと言うが、予約後の納品待ちがまだまだ続いている。熟練技術者の人手不足が続くなか、優れた加工精度と加工速度を有する機械による省人化・省力化が更に急がれる今、工作機械の需要が落ちたというよりも、むしろ受注が飽和状態になっているだけと解釈できはしまいか。納品が解消されれば、いずれまた工作機械への投資は盛り返すであろう。さらにまた、国内家電メーカーによる白物家電の需要復活がささやかれている。これは予想もしなかった動きだが、要因の分析も含めしばらく様子見としつつ期待したい。
自動車分野は、今年も途上国の急速なオートモーティブ化と先進国特にアメリカの好況に伴って国内メーカーは国内外の工場ともに順調に生産が進むものと考えられる。この流れはそう簡単には変えられるものではなかろう。また、完全な電気自動車や完全な燃料電池車は、世間で言われるほど普及はしまい。ガソリン車、またはハイブリッド車が中心となって業界の景気を牽引していくこととなる。