国土交通省が高力ボルトの需給ひっ迫に関する3回目の調査を実施した。これまでの調査で需給ひっ迫の主な要因が、年間の需要量が供給量の範囲内に収まっているのに関わらず、需要側が納期や納入先が明確でない仮需要の注文を多発してきたことで、供給不足となったことを指摘している。
今回の調査では、需給動向が「ややひっ迫」に緩和。価格動向は依然「やや上昇」との回答結果が得られた。需給が緩和した要因には、同省が作成して需要側である建設関係団体に活用を要請した「発注様式」が業界に浸透して一定効果があったとしている。「発注様式」は需要側が、不確定要素の高い発注を避け「必要な分を必要な時期に」注文するために、納期や納入先などの情報を明確に記載する仕様となっている。
第3回調査によると発注様式は高力ボルトメーカーが全社で確認しているが、問屋・商社は60%確認に留まっているという。発注様式は国土交通省ホームページに公開されており、注文を受ける側も発注様式に準じた受注が引き続き求められそうだ。
これまでの調査によると、鉄骨需要量(平成30年は約510万㌧)から算出した高力ボルトの年間需要量は推定で10・2万㌧から11・2万㌧で近年に大きな変化がなく、これに対応する高力ボルトメーカーの年間供給能力は約12~13万㌧と需要の範囲内に収まっている。
同省は「高力ボルトの需要量(実需)自体が急増しているとは考えにくく、需給のひっ迫の要因は、市場の混乱に基づく仮需要の一時的な増加によるものと推定される」としている。東京五輪関連の都市開発需要の機運を受けて、需要側が需要実体のないままに高力ボルトを先買いしたことが要因であるとした形だろう。
今回の調査から徐々にひっ迫状態が解消されると予想されるが、同省が高力ボルトメーカーや需要団体と行った意見交換会では、一時期よりも納期は短くなったものの通常納期よりまだ長い状況が続いているとの指摘もあったことから、ひっ迫状況は未だ完全解消されていないことが伺える。
さらに新たな問題として、注文通りに生産したものの、需要側の都合で引き取りがされず、メーカーに滞留在庫として保管され、これが供給効率を低下させているとの指摘もあった。
東京五輪後は、都心から地方へ開発案件の広がり、施工不良案件の建て直し需要、さらに老朽化したインフラのメンテナンス需要などを控えている。これまでに必ず必要となる高力ボルトのひっ迫問題は国の主導により需給の両者が連携して解消していかなければならない。