「本来の価値」を見直そう

2020年1月12日

 10月1日から消費税増税、最低賃金改定と社会を取り巻く価格環境は変化している。ちなみに今年の最低賃金は東京都で1013円、大阪府で964円となった。東京、神奈川でいよいよ1000円を超えたことを筆頭に、全国的に引き上げが行われている。
 税率や人件費が上昇しているのであれば、このタイミングをきっかけとして価格戦略を見直し値上げするのもひとつの手だろう。「便乗値上げ」と言うと聞こえが悪いが、ここで言う値上げとは、本来その商品・サービスが持っている価値よりも安くし過ぎていた販売価格を適正価格に戻すことである。
 営業で値打ち感を出したい余りつい安くし過ぎることはあるし、また、昔に設定した売価が時代と合わなくなってくることもある。しかしそれらは営業利益と直結するのでチャンスがあれば価格改定したいところだ。
 改定にはまず、商品・サービスが持っている「本来の価値」を洗い直す必要がある。それがどれだけユーザーの役に立っているか、どれだけ必要とされているかといったビジネスの原点的な要素を再点検する。当然だが、役に立ってこそ商品としての価値が生まれる。加えて、強みを洗い出せればセールスにも活かせるし、また、社会への貢献度が多少なり見えてくるのでモチベーションアップにも繋がるだろう。
 理想はその商品・サービスがユーザーから必要とされ、高くても買ってもらえる状況が作れることだ。ユーザーは得だと思わないと継続的に買ってくれないが、だからと言って単に値下げをしては自身の首を絞めてしまう。価格以上の価値を生み出して提案することに意識を向けて、無理な値下げをせずともユーザーに得だと思ってもらえることが理想である。
 「良い商品をより安く提供する」のはまさに企業努力の賜物と言えるが、どこかに歪みが生じている可能性もある。それに、いざ価格競争となれば大企業やアジア企業に対して分が悪い。本当に良い商品なのであれば「価値に見合った適正な価格」の方がハッピーに決まっている。
 バイヤー側も、仮に供給側の値下げ努力により短期的に得をしたように思えても、そのサプライヤーの体力が長期的に見て弱っていき、最悪の場合廃業となれば安定供給という意味で不安定に陥ってしまう。また、そこまでのシナリオにはならなくとも、栄養が行き届かないと将来的にみて伸びない会社となってしまい、技術開発や商品開発の面などで共に成長する機会を損失してしまうだろう。
 サプライチェーンはその名の通り鎖だ。一部が欠けると自分にも損失が生じる運命共同体といえる。

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