ねじ業界においても輸出入の両面においてグローバル化が進んで久しいが、周知の通り日本の主要なねじ輸入国としては中国そして台湾が挙げられる。リーマンショック以降2010年代の輸入量を見ると近年では数量は年間25万㌧前後となっている一方で金額は概ね上昇傾向にあり、2018年には初めて年間1000億円を突破した。海外の展示会を訪れると、現地メーカーについて同じ展示会に訪れた日本人の関係者より「年々進歩が見られる」という声を聞く。そして中国と台湾を比較すると特に台湾の展示会では二輪・四輪向け製品など各国に合わせた規格品だけではない、より高度な技術が要求されるパーツ製品が散見される。昨年高雄で開催された「台湾国際ファスニング見本市」では台湾ねじ工業協会の理事長から「今後は自動車向けファスナーの分野が更に成長するだろう」という発言もあった。
本紙では今月初旬、その台湾ねじ産業を視察する機会に恵まれた。考慮すべき要素は多く、安易な比較は控えるべきではあるが日本と似たような課題を抱えているように感じられた。例えば人材不足で、あるねじメーカーでは製造部門のおよそ5分の1にあたる人数が外国人労働者で占められていた。現場には中国語に加え英語、マレー語といった他の言語による注意書きがあり、完成品は言葉が通じなくとも理解し易いよう色により管理されていた。関係者曰く「ねじ製造業のように作業環境が厳しいと(台湾)人材の獲得が難しい」。そのためインドネシア・ベトナムから受け入れているとのことだったが、しかし「規模によっては海外人材の活用が難しい」。台湾は外国人非熟練労働者の受け入れを従業員数に対する割合によって制限しており、これにより特に小規模の加工メーカーが人材不足に陥っているのだそうだ。他にもある別の大手ねじメーカーでは「自動化を進めていきたい」という話があった。台湾では一昨年に労働基準法が改正されており、週休二日制が法制化されると共に残業代が増加するなど人件費が上昇する一因となっている。このメーカーではおよそ60人もの検査員で目視検査を行っているとのことだったが、今後は機械化、つまり高度化を余儀なくされるだろう。
台湾は長らく各国の規格に応じた標準品の輸出国としてその地位を確かなものにしてきたが、中国の台頭によりその地位を脅かされている。特にここ最近ではヨーロッパ市場において中国製品に対するAD税が撤廃されたことにより影響が出ているという話もあった。近隣にある世界有数のねじ輸出国として、今後技術が高度化した台湾ねじ産業がどのような方向に向かっていくのか動向を注視していく必要があるのは間違いないだろう。