時代が求める電子制御 機械も捨てがたい理由

2020年1月12日

 悪質な「あおり運転・暴行事件」が大きく取り沙汰された今年のお盆。ドライブレコーダーに残された殴打の様子は壮絶だった。「ハンドルを握ると人格が変わる」とは昔からよく言われる話だが、それ以前の問題の様に思えた。荒くれ者に偶然出会ってしまうのは不幸だ。
 アクセルとブレーキの踏み間違い事故に関しても以前から報道されて関心が集まっている。それを受けた東京都は7月、都内在住の高齢運転者(70歳以上)が、ペダルの踏み間違い等による急加速抑制装置を1割の負担で購入・設置できるよう、取扱い事業者(イエローハット、オートバックスといった小売店や、カーディーラー)に対し、都が費用の9割を補助すると決定している。
 後付けの急加速抑制装置は各社から様々な設計思想のものが開発されている。アクセルにセンサーを組み込み急な踏み込みを検知するタイプ、車体の周囲に何カ所かソナーを取り付けて急発進を感知するタイプ、電子ではなく機械的な仕組みで制御するタイプ―などだ。
 国土交通省は昨年4月、衝突被害軽減ブレーキは万能ではないという旨の啓発映像を公開した。衝突被害軽減ブレーキとは自動車が障害物を感知して衝突に備える機能の総称である。動画では▽暗い状況▽太陽の逆光が眩しい状況▽雨天▽その他路面状況―によって正常に作動しないことがアナウンスされた。ここでいう障害物とは基本的には前方車両を想定していると思うが、仮にフェンスや網といった場合でもセンサーがきちんと働くのか?疑問は残る。
 サポカーの普及が目覚ましいが、「あくまでも安全運転の支援であり、機能には限界がある」との注意喚起がなされている。仮にペダル操作のミスでアクセルを踏み込んだ場合でも、車のシステムは『運転者の意思』を優先して自動ブレーキを作動させない場合もある(最近になって自動ブレーキを優先しようという動きもある)。また、▽低速の場合のみ作動▽ハンドルを操作していない場合のみ作動―などの条件も存在し、やはり手動運転をする人間の注意力は怠ることなく引き続き重要である。
 テスラ車やウーバー車が自動運転モード中に死亡事故を起こした件が記憶に新しい。手動運転車が事故を起こすのは周知の事実だが、自動運転とて黎明期のいま信頼性は無い。「CASE」のような自動運転社会が到来すればあおり運転は過去のものとなるし、他にも恩恵は計り知れない。しかし、機械制御の自動車が発明され200年以上。積み重ねた技術もある中で、過渡期の現在は手動運転+自動運転、また、電子制御+機械制御のメカトロニクスといった「組み合わせ」で安全を確保したい。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。