人材育成を図る上で社内の人事評価を明確化することが求められている。
管理側はその人材に対して、どのように評価したのかを明確に提示してあげなければ、「自分の働きぶりに対して会社は適正に評価してくれない」といった不満が生じ、最終的には人材の流出につながる可能性がある。逆に明確に評価してあげることで「自分はこの点が甘いから評価されていないのか。昇給したいから今後はこの点を頑張ろう」といったプラスの方向に社員を導いてあげられるかもしれない。
会社によって仕事内容は違うため、当然、評価システムも会社ごとに作成する必要がある。各作業を細分化して「この作業ができたら2点」「このプロジェクトに成功したら4点」といった仕組みをゼロから社内で内製するのは、管理側に相当な労力が発生する。こうした理由から、既に体系化されている資格制度を社内評価に組み込むのは有効な手段といえる。
メーカー団体としては(一社)日本ねじ工業協会が、協会認定の「ねじ製造技能検定」を運営している。現在実施されている2級試験は実務経験3年以上であれば会員資格に関係なく誰でも受検可能だ。合格を目指す人向けに毎年8月から10月にかけて東京、愛知、大阪で講習会を実施している。試験は2月に行われている。
今月開催されたねじ協の社員総会では、この「ねじ製造技能検定」を厚生労働省の「社内検定認定制度」による認定に向けた取組みが報告された。社内検定認定制度とは、企業や団体が労働者を対象に自主的に実施している検定制度のうち、一定の基準を満たしており技能振興上、奨励すべきであると認めたものを厚生労働大臣が認定する制度だ。厚労省認定になることでこれまでの制度より、技能の見える化・標準化をはじめ、資格者のモチベーション向上、従業員の定着や新入社員の採用、業界内の地位向上や差異化に効果が期待できるという。
認定を受けている社内検定は大手メーカーや業界団体のものが主で、49事業主131職種が認定を受けている(平成30年8月時点)。18年度にねじ協はこの認定に向けて、資格委員会が申請作業を進めている。19年度も講習会の充実を図るなど事業を拡大していく計画だ。かねてより技能検定の国家資格化を目指していたねじ協だが、厚労省認定の取組みは国家資格化への夢の実現に向けた第一歩と言える。人材育成と確保の上で、人材の適正な評価は欠かせない。厚労省認定により「ねじ製造技能検定」が、人事評価ツールとしてより業界に普及して活かされることを願いながら、本稿をねじの日特集号の時評とする。