元号と規格

2020年1月12日

 5月1日の新天皇即位に際しての改元として4月1日に新元号「令和」が発表されて、号外を求めたり、関連商品も売り出され、新時代への期待からか市井は賑わった。
 平成28年8月の天皇陛下による譲位への意思を示された「お気持ち」表明、29年6月に譲位が決定し、カレンダー・手帳等で出版・印刷、印章、システム等の元号表記を必要とする各業界から早めの新元号発表を望む声も多かったが、1カ月前の発表で現在対応に追われている。
 今回の改元により、元号ではなく西暦に使用を切り替える風潮・議論もあり、その際に時評子が改めて思わされたのは「元号(年号)も人々(社会)が共通認識とする規格の一つ」という事だ。
 仏滅起源・西暦・イスラム歴等の年号だけでなく、太陽暦(新暦)・太陽太陰暦(旧暦)、太陰暦等の暦法。もちろん言語・度量衡・制度もあり、社会を構成・運営していくには、或る程度の共通認識・統一規格が必要となる。
 これが複数の国・地域にまたがれば現代風に云う「グローバル・スタンダード」となる。そして通貨同様に世界で使用される範囲により、その国・文化圏の影響力が伺える。
 工業(製造業)においては、制定された度量衡に基づいて製造・使用される「ねじ」は規格の最たる例だろう。日本は明治維新の際に、太陽暦への切り替え・メートル法導入を行っているが、アメリカはヤード・ポンド法(インチ規格)であり、輸入したアメリカ車等の工業製品を修理する必要に迫られると調達先に困る国内ユーザーも多く、その需要によりインチねじに特化したメーカー・商社が事業として成立している。
 一方で昨年5月開催の(一社)日本ねじ工業協会総会において発表された、平成26(2014)年4月21日付のJIS改正に伴う日本ねじ商工連盟が取り組んできた「JIS六角ボルト・ナット附属書品から本体規格品への切り替え活動」について、全ての強度区分を対象製品にせず「強度区分8・8以上の六角ボルト」「強度区分8以上の六角ナット」に絞り、需要業界にこれまでの「切り替えを呼び掛ける」のではなく、「一部推進」とする方針に転換―となったが、やはり業界内で切り替えの準備・周知が進まず現在の規格で対応できて問題ないとの意見もあった事で、業界内で意思統一が不十分だった面も大きかった―と思わされる。 
 もし本体規格品への切り替え活動を本格的に進める際には、混乱が起こらないよう、綿密な準備を行った上で粛々と進めなければならないはず。技術・文明による文化的な生活は規格の基に成立しているが、「ねじ」こそは身近で最たるものだ―と認識しなければならない。

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