拡大するセンサー市場

2020年1月12日

 人の持つ五感の情報を機械が代替して感知するために必要なセンサー。今あらゆるモノにセンサーが組み込まれているが、省力化や車の自動運転、IoTといったニーズを受けてセンサー市場は急激に成長している。
 マーケティング調査会社によると、2020年のセンサー世界市場は7兆7009億円、971億ユニットにまで上るという。
 半導体や電子部品、自動車業界では設備投資により計測、制御に関わるセンサーの需要が増加しているほか、自動車の排気ガス中の酸素の有無を検出する空燃比センサーに代表されるように環境規制対応、また運転制御もカメラやそれに連動したセンサーが多く組み込まれ自動運転の発展に貢献している。また我々が常に手にしているスマートフォンを見ても、地図アプリには欠かせない位置情報を把握するGPSセンサーや方角を感知する磁気センサー、動きを感知する加速度センサーやジャイロセンサー、明るさを判断する環境光センサー、顔の距離を感知する近接センサー、パスワードの入力を無くしセキュリティ機能を高めた指紋センサーなどが搭載されており、まさにセンサーの塊のようなデバイスと言えよう。世界的にはあらゆるモノとインターネットをつなぐIoTの社会が本格化しようとする中で、環境整備に向けたセンサーの小型化や省電力化、ネットワーク機能の強化も求められている。
 センサー市場の成長により、ファスナーの需要面で影響してきたのは半導体製造装置の増加であろう。本紙3月4日号で既報の通り半導体製造装置の世界市場は、2018年に前年比9・7%増の621億㌦に達して過去最高を記録した。19年は韓国や中国の半導体メーカーの設備投資の減速や、顕在化してきた米中貿易摩擦の影響を懸念して減少する見込みとなっている。半導体製造装置へ供給しているファスナーメーカーによると、市場縮小の影響は既に受注に表れているというが、センサーが既にあらゆるモノに欠かせないキーテクノロジーになっている今、長期的にみれば市場は底堅く2020年には再び拡大基調に入るのではと予測している。
 需要面のほかファスナーの生産現場においてもセンサー技術の進化が期待される。生産機械や検査・試験設備の高精度・高機能化は勿論、未だ人間の手により行われている作業をセンサー搭載の機械に置き換えられる部分は多い。例えば、ねじゲージ検査や小ロット多品種の梱包工程の全自動化などが考えられる。人間の目(視覚)や耳(聴覚)、肌(触覚)、口(味覚)、鼻(嗅覚)の精度をセンサーが超えつつある今、これまで人間がそれら器官に頼ってきた以上の応用方法が今後生まれてくるかも知れない。

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