好調を続けてきた半導体製造装置が2019年に減少に転じる見通しだ。国際的な業界団体であるSEMI(米国)の発表によると、18年の半導体製造装置(新品)販売額は、前年比9・7%増の621億㌦に達し、17年に記録された過去最高額である566億㌦を更新することが予測されている。一方で、19年は4・0%減の見通しとなっており鈍化が予測されている。
今年の減少を予測している要因は、最大仕向け先の韓国や中国の半導体メーカーが設備投資を控えているためで、米中貿易摩擦の深刻化を懸念する影響もあるという。こうしたマイナス要因もあるが、中長期的にみると半導体分野の成長は底堅いといえるだろう。
半導体は、スマートフォンの高機能化、増加が続くデータ蓄積のためのデータセンターの増設などにより世界で需要拡大が続いてきた。17年には半導体製造装置は日本が輸出する一般機械のうち6%を占めるウエイトを占めており、日本の主要な輸出機器として頭角を現してきた。工作機械が70億㌦、自動車などの輸送機器が1641億㌦という数値から見ても、半導体製造装置の位置付けがいかに高いものかがわかる。
日本大手メーカーの第3四半期の半導体製造装置事業の業績をみると、データセンターやスマートフォン需要の鈍化傾向を背景に、メモリメーカーの一部において設備投資計画の見直しが行われるなど、市場は足元では調整局面に入っているとしながらも、連結売上高は前年同期比20%増で推移。また次期の2019年度通期でも事業全体で、増収増益で3期連続の過去最高益を予測している。一方、2019年暦年でみると、製造装置によっては、前年比15~30%の減少を予測している見方もあり、年前半の投資抑制傾向から年後半の回復に期待している。
上述の通り、今年は市場の鈍化が見込まれているが、ファスナー企業の中には引き続きこの分野を成長市場ととらえて営業展開を強化している動きもある。
半導体製造装置には工作機械と同様に六角穴付きボルトが多く使用されているほか、真空環境用の穴加工が施されているものや、耐食性や耐熱性、非磁性に対応するステンレスやチタン、その他特殊鋼のファスナーが使用されている。このほかクリーンルームでの洗浄や梱包を求められる場合もあるなど、ファスナーの中でも特殊な技術や工程が必要とされる。
中長期的にみると、産業のIoT化や人口知能(AI)、次世代通信規格「5G」など新たな技術の進展により着実に拡大していく分野と言え、精密穴加工、耐食、耐熱、クリーンルーム出荷といった付加価値の高いファスナー製品が今後も市場に多く投入されていきそうだ。