政府の統計調査問題が浮上し、統計の信頼性が揺らいでいる。国会や自治体、行政機関等が政策を審議する際や、民間企業・団体で経営戦略を練る際、公的調査に問題はないものとの前提でデータを活用しているのであって、根本であるこれが揺らいでしまうと公・民のあらゆる分野で全国に影響する。
今回の騒ぎのなかで、倫理面での問題のほかに、官公庁の人材不足の問題も浮上した。行政機関自体が非正規雇用を多分に行うほどで、仕事量の圧迫により統計調査をなおざりにしてしまうとのことだ。しかしながら、今回の不正問題がこれにより正当化されうるものではない。たとえ業務の効率化を狙ったものにしても、調査方法を変更するのであれば、事前にそれを公に示すという正規の手続きが欠けているからだ。
統計は、あらかじめ定められた調査方法と実際の方法とが異なる場合、これらの差異が大きければ大きいほど統計結果の差異も大きくなる。また、調査方法が過去と現在で異なると、集計した数字の連続性・整合性が取れなくなってしまう。これらは統計学の常識だ。これらの影響を認識せずに、もしくは認識しながら実施するのは無責任というものだ。
弊紙でも、新年特集号、ねじの日特集号、夏季特集号など特集を組むたびに、ねじの売上高・数量・収益の増減を定点観測し、推移を分析している。また、特集ごとに新しいテーマを設けてアンケート調査を実施している。さらに普段号においても、近々、3月に人材採用状況の調査を予定しており、数字を扱う者としては、統計を取るたびに間違いなきよう注意を払うことの大切さと責任を感じている。
特に人材採用調査では、属性別(男女・大卒・高卒等)の採用人数のほか、新卒者・中途採用者・アルバイト別の初任給額についても扱っており、読者はひととおり目を通して自社と他社との給与の相対的な大小を知り、これに自社の経営体力や働き方改革の動向などを勘案しながら今後の人件費の増減に役立てていく。統計とはこうした役割の一旦を担っているのであり、調査段階から集計に至るまで、各工程で不備や不正・瑕疵などあってはならない。
なお、海外政府や海外機関による統計については、国内から正誤や不正の有無の確認のしようがないが、働き方改革に関連する労働生産性の国際比較に関わる各国の実態調査や、近隣の新興諸国におけるねじの生産量・金額・貿易統計など、我が国の政府・企業・業界団体の施策を決定する上で重要となる諸々の統計がある。諸外国においても、これらの統計が決して不正へと堕落することなく正しく行われていくことを期すばかりである。