中国ねじ産業もまた変化の時を迎えているようだ。先に開催された「2018中国国際ファスナー展(2018 IFS China)」で複数の関係者に近況や中国市場の見通しについて話を聞いたところ、全体像として浮かび上がってきたのは依然として汎用品の大量生産が主流でありながらも、より高度な技術が要求される製品の生産へと目を向け始めた中国ねじ産業の姿だった。近年では人件費の上昇に加え、米国との貿易摩擦もあり中国から拠点を移す企業も見られる一方で、他方ある大手ねじメーカーは今年に入って自動車業界への参入に向け中国拠点における高付加価値製品の生産体制を強化するなど投資の動きも見られる。
同展では中国・台湾企業をはじめ世界各国から700社が出展し、主催者によれば3日間で約2万5000名の業界関係者が訪れた。会場は「ねじ製品」と「生産設備、工具など関連製品」に分けられ、このうち関連製品が展示されたホール2では中でもヨーロッパのメーカーによるフルサーボフォーマーに注目が集まっていた。なお圧造加工機メーカーでは欧米、日本、台湾の主要各社のほか中国メーカーの姿も見られた。中国製のフォーマーは特にコスト面で非常に高い競争力を持ち、そのため近年では中国へ進出した台湾企業が撤退するケースが出てきているという。この点についてある関係者は「成形機に関して言えば台湾そして中国は後発国となるが、年々品質が向上している」と指摘した上で「技術自体が成熟しているため他国との差別化が難しく、最後はコスト競争へと行きついてしまうのでは」と懸念を示した。この点についてヨーロッパのメーカーに問いかけたところ自社の強みとして柔軟なカスタマイズを可能にする独自の設計思想と100%自社生産の徹底した品質管理を挙げた。技術が成熟しようとも製品に対するこだわりが差別化に繋がる要素、すなわちブランドを生み出すのだと感じさせられた。
同じく同展主催者によれば昨年(2017年)の中国ねじ産業は輸出面において好調な結果となり、数量は290万㌧(前年比5・8%増)で輸出額は50億5000万ドル(同11・3%増)、主要相手国としてはアメリカ、日本、ロシア、ドイツ、韓国となっている。これを日本と比較すると金額面では日本の約1・8倍であるのに対し、数量では約8倍となっている。中国はいわゆる「EVシフト」を牽引する市場として注目を集めているが現地の自動車部品産業は技術的に成熟していないという見方が強く、今後の発展に商機を見る関係者も多かった。ねじ業界においては汎用品の輸出国として存在感を示しているが、今後はより付加価値の高い製品も増えてくるのだろうか。動向に注目したい。