自動車産業では、燃費向上や軽量化などを目的に、素材を適材適所に組み合わせて使う「マルチマテリアル化」の流れが強まっている。ファスナーは、異種材同士の接合や既に組み合わされている複合材を接合するための技術として、溶接や接着剤と並び新たな試験開発が求められる。
神戸製鋼所とファナックは接合が困難だった超ハイテン鋼板とアルミなどの異種金属や超ハイテン鋼板同士を、アーク溶接とエレメントと呼ばれるリベットを用いて接合するロボットシステムを共同開発した。超ハイテン鋼板とアルミの組合せによる接合はその鋼材の強度に耐え、かつ扱い易い接合方法がなかった。神戸製鋼所はアーク溶接とエレメントと呼ばれるリベットを用いた接合技術を、ファナックはそれを自動化するロボット、エンジニアリング、センサー技術を用いて共同開発した。
具体的には、複数の穴を予め空けたアルミ板と、穴無しの鋼板を重ね合わせ、中空形状のリベット状消耗材(エレメント)をアルミ穴に挿入、極短時間のアーク溶接で穴内に液体の溶接金属を注入する。エレメントと鋼板が溶接され、アルミ板をこれらの間に強固に挟みこむことで接合する。この技術は神戸製鋼所の藤沢事業所内のショールームにて公開している。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、鋼板、アルミニウム材、チタン材、マグネシウム材、炭素繊維、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの研究開発を進めているが、これらを組み合わせるマルチマテリアル技術の研究プロジェクトとして、シミュレーションや難燃性マグネシウム合金、超高強度鋼板の腐食解析技術の開発などを立ち上げる。
日立金属では砂型鋳造やダイカストでの製造において部材の軽量化技術の開発を進めてきたが、市場の軽量・高強度化ニーズに応えるため、新たにCFRPを加えた異種材接合技術の開発を進める。同社の素材研究所(栃木県真岡市)で研究を進めて2025年の製品化を目指す。
ホンダのスーパースポーツカーであるNSXは初代がアルミニウム合金を多用して注目されたが、新型の二代目はシャーシ各所にアルミニウム合金、CFRP、SMC(強化繊維入り樹脂シート)、耐高温性樹脂を使い分けて採用している。高い運動性能が求められ各所の質量配分や剛性、また軽量化が求められるスポーツカーにとってマルチマテリアル技術は必須だ。そのノウハウはベーシックモデルへも投入されてくるだろう。
マルチマテリアル技術は世界的に見て日本は遅れをとっていると言われている。貢献できるファスナー技術の登場に期待したい。