先の大戦から73年の年月が経ち、現在の世界の軍事技術は当然のことながら当時から見れば隔世の感というべきものとなっている。そして、おそらく今後数十年の軍事技術の進化もまた、現在の我々から見れば遥かに高度化されたものとなるであろう。AI、IoT、ロボット等、IT関係の技術が軍事技術に加わることで急速に進化させるのだ。ここでは進化または高度化という言葉を使っているが、果たして軍事の進化が人類にとって「進歩」にもなり得るのかは、我々の叡智に掛かっている。
心配なのは、いつか人類が取り扱いに困るほど軍事技術が進化してしまうのではなかろうか、ということだ。IT技術は製造業から建設業、サービス業に至るまで経済で活用されるうちは人々の生活を豊かにしてくれるものだ。これまでも人類は、火と金属を手に入れて狩猟や耕作に用い、のちの火薬・ダイナマイトの発明、さらに核技術、化学技術を開発し、建築や発電・製薬などで活用している。しかし、これらが諸刃の刃であることもまた歴史の証明するところである。
露大統領は未来予測について、AIを制するものが世界を制すると述べる。確かにAIは国の経済発展にとっては有益だ。しかし、軍事技術の進化が地域の覇権に影響しかねないと思うと不気味な予言ですらある。
また、米大統領は宇宙軍の創設を訴えている。これもまた、これからIT技術がさらに進化することで実現しうることである。ライバルの中国もまた、宇宙開発に国を挙げて力を入れており、有人飛行では持てる技術力の高さを世界に示した。現時点で宇宙軍と言うと、絵空事かSF映画のような印象を与えてしまうかも知れないが、しかし確かなことは、先行的に開発に成功した国家が遅かれ早かれ将来的に制空権ならぬ制宇宙権をどこよりも早く手にするということは間違いなかろう。
もっともIT技術がピンポイント爆撃のように、人命を守りながら目的物の爆破のみを遂行するのであれば人道的な技術であるし、また、迎撃ミサイルのように国土を損害から守るために活用されるのであればこれも人道的である。しかし、人工知能を搭載した車両型または人型ロボットなどを見ると、これらが戦場に赴いて戦う未来は、世界地図を変えはしまいかと心配になるのだ。我が国だけがこうした技術を手にするというのなら安心感もあろうが、世界中で開発がなされるのだ。これらを人道的な使用の範囲内に留めることができるかどうか、最後の砦は人の叡智である。これまで核兵器や化学兵器について、悲劇を防ぐために国際社会は知恵を出して協力してきた。この努力はコンピュータの進化においても言えるのだ。