街中や工業製品で用いられるねじを紹介する「ねじ色百景」を2011年から掲載しているが、8年目にしてついに「百」を超え、前回紹介した「ロードトレイン」に使われるねじでは103回目を数える。ねじ業界に身を置いていれば経営者であれ従業員であれ、自然にねじに目がいくことと思うが、業界に携わっていなければ見過ごしていたかも知れないねじを発見することは、実に良い体験だと感じている。
それらのなかで、たびたび紹介してきた公園の遊具では、子供たちも付き添いの大人たちも特にねじを意識することなく遊ぶ。それができるのはそれだけねじが安全である証拠かも知れないし、世間一般では何が問題なのかと思われるだろう。しかしねじに関わる者としては、世間一般の業界外の人々においても、ねじに対する関心を向上させることが大切だと思っている。
というのも、ねじ業界の地位向上を図るためには、三つの要素が肝要であると日々感じており、そのうちの三つ目がこれに関わるからだ。一つ目はねじ業界がメーカー・流通ともに団結すること。二つ目はエンドユーザーが取引条件・取引価格を改善すること。三つ目は一般の人々や子供たちにねじを好きになってもらい、ねじに対する評価を高め、ねじに関わる国民的な土台を形成することである。装飾などで目立つねじを取り付ければ誰もが意識するだろうが、締結を主目的とするねじにとって本来の用途ではない。ちょっと隠れた場所にありながらも使命を果たすという、縁の下の力持ちである以上、意識されにくいのは生まれ持った性質かもしれないが、しかし人間の心理として無関心と軽視に密接な関係があることにも、我々は注意を払わねばならない。
ねじを見つけること自体はそう難しくはなく、業界に身を置かない人々でも、自宅の家電や電子機器を裏返してみたり、街中の施設や設備をぐるっと眺めてみたりすれば、ねじが使用されている箇所を、そう時間を掛けることなく自分で探す事はできるはずだ。すると、あとは関心の持ち方次第だ。現に、以前紹介した高級レコードプレーヤーのねじは、これを購入するマニアたちは製造業で働いていなくともねじの重要性を熟知しており、たびたびねじをチェックする。ねじの使用において高周波振動を低減させることにマニアは心血を注いでいるからだ。関心があるため重視する。
また、大阪市の九条南小学校では、社会学習の一環でねじの授業が行われており、これは対外発信の好例であるが、こうしたねじ業界外への発信・教育の必要性についても、これからは一層議論のテーマとすべきであろう。