今さら…と思われるかも知れないが、改めて〝値上げの春〟を実感させられる。ビール類など個人消費分野だけでなく、折から上場企業、特に中小製造業の期末業績見通しでは少なからず影響している模様だ。先に公表された実質国内総生産(GDP)では8四半期連続の増加となるなど一見、日本経済は緩やかながら成長を遂げているようにみえるが、中小企業の景況感はむしろ悪化していることが明らかになっている。
ねじ業界においても人件費や運賃の上昇だけでなく、素材価格の騰勢に対し、昨秋から今春にかけて数%前後価格是正に踏み切ったところもあり、中には今春以降値上げが目指されている品種もある。ともあれ各社各様でいかに採算性を維持・向上していけるか、が鍵となることは論を待たない。
本来、製品・サービス類の値上げは需給バランスで決まるが、この度の値上げはコスト圧力によるものだけに、安倍政権が目指した18年春闘の〝賃上げ率3%以上〟も「業績の改善はみられないが(人手不足への対応から)賃上げを実施した」とするケースが35%超を占める(日本商工会議所調査)。製造業の場合、生産人口の減少だけでなく、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の導入など規制強化が現実味を帯びているだけに、早くも賃上げ効果自体が疑問視されてきている。
とりわけ現下の企業を取り巻く環境は極めて厳しい。先に挙げたコスト圧力だけでなく、IoT時代に即応した技術開発力の育成やセキュリティ対策、働き方改革を実現しつつ恒常的に高めていかなければならない生産性の向上、事業継続計画(BCP)に代表される災害対策等々、直接的な生産活動に結びつかない様々な投資を余儀なくされているからだ。外的要因ではトランプ米大統領が発動した鉄鋼・アルミ製品への輸入関税適用措置も、世界経済への悪影響や金融市場の不安定さを増しているだけに懸念されよう。
こうした外的要因はともかく、各企業ベースでは総合的な生産性向上目的の省力化投資を適材適所に行う一方、必要に応じ取引価格の適正化を求めていく姿勢が重要になってくる。また限られた人材の効率活用に向けた制度作りとその運用、最大限に自社の強みを発揮できる新市場開拓などを通じ、〝身の丈〟に合った多角的な対応策で競争力を高めていくしかないように思われる。
この点、蛇足ながら弊紙では来る5月28日付で予定している「ねじの日」特集号において関係各位にアンケートをお願いしている。冒頭で触れた各種コストの上昇に関する設問も用意させていただいており、今後の経営の参考に供する意味でも皆様からの忌憚のないご意見を賜りたい(締切日5月14日)。