東西で採用状況を問うアンケートを実施したが、現在は売り手市場、学生側有利の労働市場であるとの評価が大方を占めた。
人手不足の原因は、一つには景気が緩やかながら順調に回復傾向にあることである。これまでの景気の循環に伴う人余り減少と人手不足の繰り返しのなかで、現在が不足期に当たるということだ。さらに、近年はこれに加え、二つ目の原因として、構造的なものも加わる。少子化による労働人口の減少、若年層が現場仕事を避ける傾向、復興事業や五輪事業への職人の集中などの諸々である。
これらのなかで、復興事業や五輪事業はいずれ事業が達成され次第、これらを手掛ける分野から他の製造業・企業へと次第に人材が流動的に供給されるようになるであろう。しかしながら、絶対的な労働人口の減少や若年層の就職先の選り好みなどは、一時的なものとして留まるものとは限らない。これらの構造的な要因は、それまでに見られたような景気循環による影響力を超え、長期的・慢性的な人手不足となりうるため、企業はそれぞれに対策を講じておかねばならない。
人手不足による生産能力やサービス能力の停滞や減退を補う方法には二つある。一つは「人」を雇うための方策を練ること、二つ目は人が少なくても力になってくれる「もの」を導入することである。
人を雇うための方法としては、アンケートでは「採用対象の拡大」をはじめ「インターンシップの実施」や「採用予算の増額」「初任給・ボーナスなどの増額」等が挙げられた。
ものを導入する方法としては、ハード面とソフト面がある。ハード面では、今までの機械よりも速い工作速度で、より精巧な工作精度を有し、熟練層の職人ばかりでなくとも、オペレーションの方法を習得しやすい機械であることが求められ、それに応じた機械を導入することで、人手不足分を補おう、さらには生産能力を増大させようとするものである。また、品質検査においても、人の目視によるチェックからより優秀な選別機を用いることで、少ない人員で精度の高い検査を行うことができる。工作機械・検査機ともに、開発する側も購入する側も「人手不足」をキーワードに、より少人数でより多くの台数を回せる機械となるよう開発を行い、将来を見据えて導入がなされていくことが求められる。
ソフト面では製造現場・工作機械におけるITの活用だ。これまで事務所内でのみ活用されてきたIT技術を、製造現場との連携に活用することで生産数の即時反映と管理を行っているねじ企業が既にあるが、こうした技術がより一層普及すれば製造業の人手不足を助けてくれるものとなる。