前号の時評においても触れたように、工作機械等の生産設備の需要が活況を呈している。今年の景況について前向きに捉えている関係者は多いようで賀詞交歓会の出席者に見通しを聞いたところ今年の景況を“晴れ”と見る声が多く聞かれた。年初より日経平均株価は2万3000円台を超える好調なスタートを切ったこともあり、この好景気について「いざなみ景気を超える」との意見がある一方で「実感が伴わない」という声は依然として根強い。本紙新年特集号(1月1日・8日付)において掲載したアンケート調査の結果においても見通しについて前回調査よりも「良くなる」が増加したのは事実であるが、それでも特に西日本企業においては「横ばい」の回答が6割に上るなど慎重な姿勢が伺える。
株価からねじ類を対象とした統計に目を移してみると、2017年の輸出実績は特に金額で高い伸びを示していることが分かる。財務省が1月27日に公表した最新の「貿易統計」によれば昨年(2017年)のねじ類15品目の輸出量は36万2127㌧で金額は3218億となり、3年ぶりに輸出金額が3000億円を超える結果となった。今後もこの基調が続くならば景況に“晴れ”を期待しても良いだろう。
統計によれば昨年は全ての月で数量・金額共に前年比増となっており、中でも金額は5~9月までいずれも10%を超える伸び率を示している。また、その後も11月(4・9%増)を除き伸び率は5%を超えている。なお、日本銀行が公表している「輸出物価指数」を見ると、ねじ類が含まれる品目である「ボルト・ナット・ねじ」は特に7月以降上昇傾向が見られ、昨年12月時点では総平均が97・7であったのに対してねじ類は99・3となっていることが分かる。
他方で輸入については数量の大半を占めている中国・台湾において、中国では環境規制の強化によりめっき工場が操業停止に追い込まれるなどねじ類の生産に大きな影響を与えている。また台湾では労働基準法が改正されたことにより残業代が大幅に上昇し、これにより同じくねじ類の生産に大きな影響を与えることが懸念されている。日本銀行による「輸入物価指数」を見るとねじ類が含まれる「ボルト・ナット・くぎ」は6月以降上昇を続け、11月には総平均が95・1であるのに対し110・7となり極めて高い水準を示すなど輸入品の大幅なコスト増が伺える。
核問題や「EVシフト」、そして突如として「TPP復帰」を示唆する米政権など不確定な要素はあまりにも多いが、少なくともねじ類の貿易環境が変化しているのは事実だろう。巷に囁かれる“好況”の二文字を鵜呑みにすることなく、現実を見極めることが重要だ。