機械関連のユーザー業界が国内外の設備投資増の流れを受けて好調だ。政府発表の昨年11月の機械受注によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比5・7%増の8992億円で2カ月連続の増加。これはリーマンショック前の高い水準である。
国内の人手不足による省力化・自動化ニーズの増加、海外の好景気による設備投資の増加により高い水準で推移しているのが工作機械だ。(一社)日本工作機械工業会発表の昨年12月の工作機械受注(確報値)によると、受注総額は1659億円となり前年同月比でみると48・3%増と大幅な伸びを示した。2017年通期で見ても、総受注額は1兆6456億円(前年比31・6%増)で、この数値はリーマンショック前の2007年を超えて10年ぶりに過去最高を更新した。さらにこの水準は2018年も維持していくと予想されている。
受注が好調である一方で、工作機械の部品不足が明るみとなっており出荷の動向に懸念が広がっている。工作機械の重要な要素部品のひとつで位置決め等に使用されるボールねじは、メーカー各社で昨年より設備投資など増産体制を進めてきたが、工作機械メーカーでは調達に苦慮する声が上がっている。その他部品の不足もあり製品の納期が1年を超えてしまうケースもあると言われている。
ボールねじなど部品の不足は、好調の工作機械業界と併せて、同じく好調の半導体製造装置で部品を取り合っていることによる影響と見られている。
前述の通りメーカーで増産体制の動きもあるようだが、活況だからすぐ設備投資という単純な動きに踏み出せない事情もある。工作機械業界では2007年に過去最高の受注額を記録して、当時も同じく部品不足問題が発生した。このためメーカー各社で増産の設備投資に動いたが、翌年に需要が急減するリーマンショックを経験している。
同じく要素部品のソケットスクリューも、工作機械業界の好調を受けて生産増となっているが、前述の通り設備投資に踏み切るか否かの難しい判断が迫られる。立ち上げまでの時間の問題や反動減リスクを考慮してのものなのか、ユーザー側からは設備投資ではなく、現状の生産体制で増産に対応できないかと注文されているケースもあるようだ。株価が数十年ぶりの高値をつけ好景気と言われる中、活況なユーザー業界に対して、どのように製品を安定供給していくか。バブル崩壊やリーマンショックなどの経験が今試されている。