トランプ関税、日本は成長維持できる戦略を

2025年4月14日

 トランプ政権が導入した鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税は、世界の貿易環境に新たな不確実性をもたらした。3月12日に発動された一律25%の関税は、鉄鋼製品ではねじ(米関税分類番号HTSコード:7318―)やばね(7320―)製品を含む特定の品目に、アルミニウム製品ではねじ(7616―)製品に適用される。これにより、特に自動車産業向けのノックダウン生産を軸とする日本からの輸出に影響が及ぶことは避けられない。
 米国の関税政策の目的は、自国の貿易赤字の是正と安全保障の強化にあるとされる。しかし、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所が発表した分析によれば、相互関税政策は米国自身にも大きな負の影響をもたらす可能性が高い。シミュレーションでは、米国が全世界に相互関税を適用した場合、米国のGDPは0・3%減少するとの結果が示された。さらに、関税対象を中国にも拡大した場合、米国のGDP減少幅は2・0%に拡大し、自動車産業への追加関税が加わると2・5%減となる。関税政策による輸入価格の上昇が、国内需要の縮小とコスト増加を引き起こすためである。
 シミュレーションでは日本のGDPが0・2%増加するとされるが、中国製品への高い関税率で、米国市場で中国製品から日本製品などに需要がシフトすることを前提としている。しかし、トランプ政権は関税政策において「非関税障壁」も考慮する姿勢を示しており、日本が今後どのような影響を受けるかは予測が困難である。
 ASEAN諸国は、対米関税率の違いにより影響が大きく分かれる。シンガポールを除く東南アジア諸国では、電子・電機産業や食品加工業への打撃が特に深刻と予測される。中国への関税が強化された場合、中国製品の一部がASEAN諸国にシフトすることで一部にはプラスの影響が見込まれるが、それ以上に自国産業が米国市場で苦境に立たされるリスクが高い。
 この分析結果が示唆するのは、保護主義的な貿易政策が、現代のグローバル化した経済において必ずしも意図した効果を生まないという現実である。米国は短期的には国内産業を保護できるかもしれないが、長期的には経済全体の競争力を低下させる可能性がある。加えて、世界の貿易システムを不安定化させることで、サプライチェーンの再編や投資の停滞を招く恐れがある。
 日本に求められるのは、貿易摩擦が続く中でも安定した供給網を確保し、経済の持続的な成長を維持する戦略である。自動車産業を中心とした輸出企業は、米国市場への依存度を再評価し、代替市場の開拓や生産拠点の多様化を進める必要があるだろう。

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