ロボット市場の発展が加速している。国際ロボット連盟が1月下旬に発表した2025年のロボット5大トレンドを見ると、人工知能の高度化、ヒューマノイドロボットの進化、エネルギー効率の向上、新たなビジネス領域の開拓、人手不足対策としてのロボット活用が挙げられる。これらの動向は、ファスナー関連業界にとっても無関係ではない。
人工知能の進化は、ロボットの高度な判断能力と適応力を高め、多品種少量生産の現場における自律的な作業を可能にする。視覚装置を活用した分析型AIの導入により、ねじ締結工程の精度向上が期待される。さらに、フィジカルAIが進展すれば、ロボットが実環境で自ら学習し、最適な締結動作を獲得する可能性も高まる。
ヒューマノイドロボットの実用化が進めば、倉庫や組立工程での作業がより効率化される。産業ロボットメーカーでは単一目的だけを担うヒューマノイドロボットの開発に集中している。特に、自動車産業などにおいて、ねじの組付けや取り付けを担うロボットの需要が拡大するだろう。一方で、既存の専用機と比べて、コスト効果などの観点からヒューマノイドロボットによる大規模ビジネスへの発展にはまだ不透明性があると指摘している。
エネルギー効率の向上も重要なトピックだ。ロボット自体の軽量化は、稼働時の消費電力を削減し、持続可能性を高める。ねじ製品は、高強度かつ軽量な素材の開発や、低摩擦で長寿命な製品の提供が求められる。特に、生体工学を応用したグリッパ技術の進歩により、ねじ締結におけるエネルギー消費の低減が期待される。
また、ロボットの新たなビジネス領域として、RaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)の普及が進む。これにより、中小企業でも初期投資を抑えながらロボットを活用できるようになり、結果としてロボット用ねじ製品の市場規模が拡大する。さらに、建設業やラボ自動化分野など、新たな需要が生まれることも注目すべきだ。
最後に、人手不足の深刻化がロボット導入を加速させる。製造業において、熟練工の減少が続く中、品質の目視検査、健康を害するリスクのある塗装作業、力仕事、精密ねじ締結など、高度な技術を要する作業をロボットが代替することは避けられない。ロボット技術の進化とともに、ねじ業界、特に締結分野においては、新たな用途を見据えた開発が急務となる。2025年のロボット市場は、単なる生産効率の向上にとどまらず、持続可能性や人手不足の課題解決に向けた大きな転換点を迎えている。ねじ業界としても、こうした動向を見極め、積極的に技術革新を進めることが求められる。