年の瀬を前に一年を振り返ると今年も様々な出来事があったが、政治・経済の両面において様々な要素が入り乱れる混沌とした一年だったと言って良いだろう。全てを挙げることはできないが例えば「2024年問題」では物流への影響はもとより建設業界においても時間外労働時間の上限が規制された結果工期が長期化する傾向に陥っている。そのため物件やプロジェクトの見直し及び遅延に繋がっており、工事が始まらないため資材の動きも停滞しているというのが現状ではなかろうか。関連する話題として今年は記録的な猛暑に見舞われたこともあり作業不能日が例年よりも増加する結果となった。近年の異常気象はもはや気力で乗り越えられる次元にはなく、働き方を含めて企業は今後も対策していく必要に迫られるだろう。
また相場に振り回された一年でもあった。年初の1㌦=140円台前半から日米の金利差拡大などを受けて今年7月頃には1㌦=160円を突破したが、これは年初比で円の価値が1割以上低下したことになる。しかしその後一転して円高が進み、わずか一月後の今年8月には年初の水準にまで戻るという極めて激しい値動きを見せた。極端な円安は輸出に関して有利に働いた一方でエネルギーコストの増加など企業活動に更なる負担を強いるなど負の側面も露わになった。円の動きは一企業が対処できるものではないが輸入(もしくは輸出)への依存傾向が高い企業は円安/円高のどちらに動いてもリスクヘッジができるよう事業を見直す必要があるだろう。
政治についても大きな動きがあった一年となった。米大統領選ではトランプ氏が再選を果たし、国内でも衆議院選挙の結果15年ぶりに与党が過半数を割る結果となった。また直近では隣国である韓国で戒厳令が発動されたことにより非常に不安定な状態に陥っており東アジアの安全保障という観点からも予断を許さない状況となっている。トランプ氏が再選したことで向こう4年間は超大国であるアメリカが自国の利益のためディールに動くことが確実となったが、第一次トランプ政権の間に中国との貿易摩擦で世界経済がどれだけ冷え込み、また国家間の連携がどれだけ停滞したかを思い返すならトランプ氏の再選は諸手を挙げて歓迎すべき事態とはならないだろう。
なお中国については中国経済の低迷による影響もさることながら中国に対して厳しい姿勢で臨むトランプ氏の再選が明らかになったこと、中国市場自体が成熟したことにより拠点を展開するメリットが小さくなったこと、そして依然として政治リスクが存在していることから自動車・建機をはじめとしたいくつかの分野では中国市場からの撤退や他国へ生産拠点を移す動きが表面化している。かつて中国は世界の工場として大きな存在感を示したが、複数のリスクが併存する前で中国市場とどのような距離感を選ぶのかは課題になってくるものと思われる。今後の動向に注目したい。