トランプ氏が再選、揺れ動く産業界

2024年11月18日

 アメリカ国民はドナルド・トランプ氏を第47代大統領に選んだ。日本としては全く他人事ではなく、今後経済・安全保障の両面で大きな課題に直面するだろう。トランプ氏は公約として輸入品に対して一律関税をかけるのに加えて中国製品については60%の関税をかけるとしている。第一次トランプ政権の際こうした措置が中国との貿易戦争に発展して世界経済が冷え込んだのは記憶に新しい。中国に生産拠点を置く企業が影響を受けるのは必至で例えば台湾政府はトランプ氏の当選が確実となったことを受けて早くも影響を受ける台湾企業に対して生産拠点の移転に対する支援を行うと表明している。人件費の高騰や政治的なリスクを受けて中国から他国へと生産拠点を移す動きは以前より見られていたが中国に対して厳しい姿勢で臨むトランプ氏が再び大統領になったことでその動きは一層加速するだろう。
 また同じく中国企業による関税回避の動きについても今後活発になることが予想される。鋲螺(ねじ)関係では中国そして台湾は世界有数のねじ産出国として知られているが、仮に中国産のねじ類が関税の影響を受けるようになった場合台湾メーカーにとっては追い風になり得る。その一方鉄鋼材料で同様の現象が時折起こっているように中国製品が売り先を求めて日本市場へ流入するというのは想像に難くない。ただ昨今の物価高騰及び需要の低空状態を鑑みると流入した輸入品を受け入れるだけのキャパシティが日本市場にあるかどうかは疑問だ。
 更にトランプ氏は石油、天然ガスを増産させると共にEV推進の動きに歯止めをかける姿勢を見せているがこの決定がアメリカの自動車産業に大きな影響を与えるのは火を見るよりも明らかだ。日本に対しては第一次トランプ政権の際、当時の安部晋三首相との個人的関係は良好であったが鉄鋼関税(22年に一部免除)が導入されたのに加えて加盟が期待されていたTPP(環太平洋パートナーシップ)からは早々に離脱を表明している。また20年より発動している日米貿易協定もアメリカに有利な内容で合意が成された。日本は第一次トランプ政権を前に難しい舵取りを迫られたが再び厳しい交渉に直面することになるだろう。
 米大統領選について報じる際「もしトラ(もしハリ)」なる単語が散見されていた。概ね「もしもトランプ氏が再選されたならどのような未来が予想されるか」という意味で使われていたがどこか架空の未来であるかのように扱われていた「もしも」は現実となった。結果としてアメリカ国民は自国第一主義を掲げるリーダーを次期大統領に選んだがその影響は日本の産業界にとって、もちろん鋲螺業界にとっても決して小さくはない。

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