コロナ禍の影響が薄れていく中、物価高騰や人材不足を背景に企業の倒産件数が増加している。大手民間調査会社が今月8日発表した報告によると、今年上半期(4~9月)の全国企業倒産件数は5095件となり前年同期比でおよそ2割増となったとのことだ。産業別では「金融・保険業」を除く全ての業種で増加しており、「サービス業他」が1693件と全体の3割近くを占める結果となった。なお「製造業」は585件で前年同期比3割弱の増、「卸売業」は639件で同3割の増加となった。
また同報告ではコロナ禍中に実施されたいわゆる「ゼロゼロ融資」利用後の倒産件数は309件(前年同期335件)で「小康状態に入った」とまとめている。企業の倒産件数はコロナ禍を境目に一時的に低水準となったがコロナ禍からの回復後は急激に増加しており、同発表では「現在の増加率を維持すると2013年以来11年ぶりに1万件を超える可能性が出てきた」旨指摘している。適正な開業率と廃業率を市場の新陳代謝に例える向きがあるが、開業も廃業もどちらかが過剰になれば市場が歪む要因となる。特に日本ではかねてより少子化等を受けた後継者不足が問題となっており、鋲螺業界においても最近ではメーカーを中心にM&Aの動きが活発に見られるようになってきた。
コロナ禍から回復した後でも経営環境は不安定な状態が続いており、直近では米大統領選や大きな衝突が懸念されている中東情勢が世界の経済動向を左右する要因の一つとなっている。
先に挙げた報告を見ると特に飲食店やサービス業の倒産が顕著となっているが賃上げによる人件費の上昇を含む諸々のコストが上昇する中、コロナ禍により景気が停滞していた後で訪日外国人も戻ってきたこともあって急に競争が激化した背景と無縁ではないだろう。他方で製造業については、日銀が今月1日発表した短観では業況判断指数(DI)は前回調査から横ばいとなる結果となった。
認証不正問題の影響を受けていた自動車分野では一部生産が回復するなど明るい材料もあるが全体としては先行き不透明感が漂っている。足元では再び円安への圧力が高まっていることもあり、輸出での恩恵が期待できる一方コスト増が懸念される。また巷では消費税の増税がまことしやかに囁かれているが実施された場合国内の景況感に大きな影響を与えることは免れないだろう。引き続き金融、政治、税制と他方面にアンテナを張りながらの経営が求められる時間が続きそうだ。