「協働ロボ」を導入しても、エキスパートは不可欠だ

2024年10月7日

 少子高齢化や労働力人口減少といった社会課題が深刻化する中、製造業でも人材不足解消や作業効率向上への対応が急務となっている。そこで近年進められているのが協働ロボットの導入。製造業は生き残りを賭け、大きな決断を迫られている。
 先日、協働ロボットのテストラボを見学する機会があったが、ロボットを導入する目的には「省人化」と「省力化」「少人化(しょうにんか)」の3つがあるという。「省人化」は文字通り、作業の振り分けや機械の導入などによって一人分の仕事を減らすこと。そうして一人をラインから外すことで、その人を他の仕事に回すことができる。工数ではなく人の数で考えるのが省人化の要だ。
 それに対し「省力化」は、「作業負担の削減」を指す。例えばロボットを導入して作業を自動化すれば、作業者にかかる手間が減り、作業にかかる時間を削減することができる。ただし、実際に作業にかかる人員を削減してコストダウンすることまでは示していない。最後の「少人化」は受注数や生産量に応じ、作業者数を変動させながら一定の生産性を維持する考えだ。繁忙期だけ作業者数を増やし、閑散期には逆に減らすという運用など、「省人化」の進化版のようなものだ。
 この3つの導入目的のうち、見学したテストラボで一番多いのはやはり「省人化」対応。昨今の生産現場における、技術者不足を如実に物語る。現場は人手が足りないため、技術者一人当たりの負担が大きく軽減が望まれていることから、「人が行う作業を協働ロボットに代替させる」わけだ。人の代わりに現場で組み立てやハンドリングなどの作業を行う協働ロボットは、一般的な産業用ロボットよりも小型で設置エリアが少なく、安全柵の設置も必要ない。作業者のそばで稼働するので、一緒に作業ができる。ロボット本体を必要な場所に移動したり、ハンドを付け替えて様々な工程に使用したりするなど、汎用性も高い。近年は製造工程だけではなく搬送工程でもロボットが導入され、人が行き来する通路での搬送など、搬送工程のさらなる省人化が進められている。
 こうして人の仕事は「省人化」の流れに沿って、AIやロボットに代替されていくのだろう。それでも「人にしかできないこと」「人がいなければできないこと」は、なくならない筈だ。ロボットはあくまでも人の生活や仕事を支える一部であり、人が生活や仕事をしやすい環境をつくる補助的なものに過ぎない。「省人化」の行きつく先は「無人化」「全自動化」だが、それでは現場からエキスパートがいなくなってしまう。製造現場におけるエキスパートの存在は計り知れない。AIやロボットと共存してこそ、製造業の未来がある。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。