約束手形、いよいよ60日超過は行政指導に

2024年5月13日

 約束手形等の交付から満期日までの期間が60日を超える場合は、2024年11月以降は行政指導の対象となる。約束手形を発行している企業、また受け取っている企業は共通認識を持つ必要がある。
 中小企業庁は、長期の手形等が下請事業者の資金繰りの負担となっていることを踏まえて、取引適正化の重点課題のひとつに「支払条件の改善」を位置付けて、業種別の下請ガイドラインや自主行動計画などを通じ、手形等による支払期間の短縮を推進してきた。今回、同庁と公正取引委員会は、各業界の商慣行や金融情勢等も総合的に勘案して意見公募を経てサイトが60日を超える手形等が、下請法上の「割引困難な手形」等に該当するおそれがあるものとして、指導の対象とする運用の見直しを公表した。
 事業者が手形等のサイトを短縮できない理由は、上位の取引先が手形等によるもので、そのサイトが長いことにある。同庁は、下請法の対象とならない取引も含めてサプライチェーン全体でサイトを短縮化していくことが中小企業の取引適正化のために必要だと指摘している。サイトの短縮に取り組む事業者の資金繰りの影響へ配慮するため、同庁は公正取引委員会と連名で業界団体や金融機関、監督省庁に要請文を発出した。具体的には、▽サイトが60日を超える手形等を下請法の割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とする運用が、令和6年11月1日から始まること▽ファクタリング等の一括決済方式については、サイトを60日以内とすることに加え、引き続き、一括決済方式への加入は下請事業者の自由な意思によること並びに親事業者、下請事業者及び金融機関の間の三者契約によることを徹底すること▽下請法対象外の取引についても、手形等のサイトを60日以内に短縮する、代金の支払いをできる限り現金によるものとするなど、サプライチェーン全体での支払い手段の適正化に努めること▽手形等のサイトの短縮に取り組む事業者からの資金繰り支援の相談に丁寧かつ親身に応じるとともに、事業者の業況や資金需要等を勘案し、事業者に寄り添った柔軟かつきめ細かな資金繰り支援に努めること―を要請している。
 今回の公表に先立った意見公募の中には、▽そもそも手形はデジタル化に逆行するものだ▽下請代金の支払手段は手形ではなく現金に限定すべき▽資本金額で下請法の対象外となる取引が多く、これら下請法の対象外の取引についても変更案や指導対象にしてほしい―といった意見も上がっていた。「支払条件の改善」に向けた取組みは中小企業の賃上げから成長につなげる柱のひとつだ。サプライチェーン全体で改革していく必要がある。

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