ついに3月上旬で日経平均株価が4万円台となって史上最高値を更新したが、すぐさま3万円台に戻るなど最近の株価変動は激しい。かつて故・小渕恵三元首相が野菜の蕪を持ち上げながら「株(蕪)上がれ」と叫んでも一向に上がらなかったのからもう四半世紀。株価上昇は喜ばしいはずなのだが物価上昇分を鑑みて実質賃金は上がらず、実体経済の景気とは温度差がある。株価はあくまでも企業への期待値と景気の指標、望まれているのは株価というより景気の上昇だったはずだ。
今回の株価上昇は複合的として様々な背景が論じられている。
NISA、そして今年からの新NISAで投資を始める層が増え資金が流入して過熱しているという考え、しかしこれは今まで投資してこなかった層の先が見えない不安感、労働者個人が勤労において給与が上がる見込みがない事への裏返しとも云えそうだ。
そして円安の影響で輸出企業や海外展開している企業が有利となっている点。輸入している資源(材料・エネルギー)価格が上昇して国内では物価が上がり、企業において日本国内での業績が良くなくても、海外での事業で全体としては好調という決算短信の上場企業も多い。
そして今まで好調だった中国が住宅・不動産バブルをはじめ今後の経済成長が期待できないとみて日本株に向かっているとも云われている。そもそも中国は共産党が統治する社会主義国家であり、改革開放路線で「資本主義のいいとこどり」を進めてきた国であるのを忘れられがち。しかし私有財産が認められず最終的には国家の所有となる点が再認識され、そしてバブル崩壊・恐慌といった経済の失速という「資本主義のわるいところ」が顕在化する事をかぎ取っているのかもしれない。
1929年に端を発した世界大恐慌からそろそろ100年、資本主義経済の問題点が如実になった一方、ソ連は社会主義で経済は影響をほぼ受けずにいられ第二次世界大戦も乗り越えたが立ち行かなくなって冷戦が終わり、中国は政治が社会主義でありながら経済だけは資本主義を取り入れていたが為に不安要因が尽きず、結局は過熱する投資や需給バランスの崩壊を危惧しながら、必要な時には対処していく資本主義でいく必要が再認識された100年間といえるはずだ。
大恐慌ほどでなくても、2008年のリーマンショックですら世界中で大衆の労働や生活に大きく影を落とした。株価上昇の影響(恩恵)は実体経済にはなかなか波及しない一方で、株価下落の悪影響の時は実体経済にかなり影響される。投資家でない限り株価に一喜一憂する必要はないだろうが、悪影響が来ないかだけは注視しなければならない。