円安と人材不足、厳しい経営環境続くか

2024年3月11日

 国内の景況感を見ると、年末及び年明けに発覚した自動車メーカーの不正問題の影響などもあり年初以来の国内は依然として力強さに欠けた状態が続いている。そんな中先日公表された貿易統計を見るとねじ類の輸出については2021年9月以来実に2年と5カ月ぶりに数量・金額の両方で前年比二桁の増となった。なお数量単体で見ても前年比で二桁増となったのは同月ぶりとなっている。ねじ類の輸出は昨年1年間を通じて低空飛行が続いていたが回復への兆しになるだろうか(本紙2月26日付に関連記事)。円安市場が続いており輸出に追い風が吹いている状態ではあるが特に中国経済の失速が輸出に大きな影を落としている。現状熊本へのTSMC進出や首都圏をはじめとした再開発、あるいは大阪万博といった話題があり、過去数年を振り返るとロボット・工作機械や半導体製造装置、あるいは建機といった外需を中心に賑わっていた産業界にとっては意外にもと言うべきか、国内で明るい話題が目立っている状況だ。
 ただそうした明るい話題にも文字通り人材の奪い合いが起きており、仕事はあれど人が足りない状態が続いている。物流や建築業界の下請け構造の問題は兼ねてから指摘されていることだが1次→2次→…と元請けから離れれば離れるほど適正な利益を確保するのが難しくなり、結果として格差を生み出すと同時に業界全体に人材が集まらない負のスパイラルを生み出してしまっている。デフレ脱却を目指す政府の思惑もあってこの春には昨年同様ベースアップが話題になることが予想されるが、政府が目指す「成長と分配の好循環のためには産業構造そのものを変えていく必要があり、労働環境が健全にならない限り人材を集めるのは難しいだろう。
 ところで、東日本大震災の発生から今年で13年目を迎える。特に今年は元日に能登半島地震が発生したこともあって2万人近い死者・行方不明者を出したこの未曽有の大災害について思いを寄せずにはいられない。この10年と少しの間でさえ記録的な地震が数回観測されていることからも日本で暮らし、事業を営むためには大地震のリスクをどのような形であれ受け入れざるを得ないということになる。BCPの策定や災害リスクの想定といった備えについてはある程度浸透してきたとはいえ依然として大企業が中心となっており、政府調査によれば令和元年時点で大企業の約7割がBCPを策定している一方で中小企業は3割強に留まっている。災害の恐ろしさが分かっていたとしてもなお平時は平時のことしか目に入らなくなるのが人間の性である。今日、3月11日を迎えるにあたって災害の恐ろしさと普段から備えることの重要性を改めて肝に銘じたい。

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