増加する倒産件数、企業の高齢化が課題に

2024年2月19日

 盛り上がりに欠ける先行き不透明な景況感が続いているのに加え、物価高や人手不足といった厳しい経営環境もあって小企業の倒産が増えている。業界においても昨年大きなところでは浜松の自動車向け部品を多く製造していた精密部品メーカーが民事再生法の適用を決めている。大手信用調査会社が今年1月中旬に公表した調査結果によると昨23年度の企業倒産(負債額1000万円以上)は前年比35・1%増の8690件となり1992年以来の高水準を記録したとのことだ。
 この調査結果について、産業別では全ての産業で前年を上回る結果となりその中で製造業については977件で前年の722件を3割強程度上回る形となっている。なお企業の規模別で見た際は10人未満が全体の88・5%を占めており、小規模事業者の倒産が大半を占めていることが分かる。中小企業庁によると23年7月から24年4月までにいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済開始時期が集中しており、民間返済がピークを迎えることから同社発表の中では24年の倒産件数について1万件を超える可能性があるとしているが景況感が回復に転じる兆しが見えない以上、残念ながら今年の倒産件数はこの見通しに近い数値になるものと思われる。
 業界では例えば穴あけといったねじへの追加工ついて、特に小規模で加工を行っていたメーカーの閉業に伴い新たな加工委託先を見つけようとするも価格の面で折り合いをつけるのが難しいという話を時折耳にする。加工内容によっては汎用機を導入して内製化するという選択肢があり得るかもしれないが、ここでもやはり設備はもとより管理という点でも「コスト」という壁にぶつかる可能性が高い。そのため場合によっては加工案件の継続を諦めざるを得ないケースも出てくるだろうが、今は各社での検討と仕事の集約が進んでいるのが現状ではなかろうか。
 日本国内の少子高齢化が指摘されて久しいが小規模事業者の高齢化も今後の事業経営を考えていくにあたって考慮していかなければならないポイントの一つである。同じ調査会社による全国の社長の平均年齢を調べた調査では、2022年の平均年齢は調査開始以来最高齢となる63・02歳であったという。発注者と受注者双方で互恵的な関係を築いていくため、仕事を持続可能なものにするためには適正な利益の追求が必要不可欠だ。価格改定に対する理解は昔よりは浸透しつつあるがまだ十分ではないだろう。戦後「メイド・イン・ジャパン」のブランド確立に大きく貢献した先代の努力を正しく未来へ引き継ぐためにも慣習に縛られない現実に即した商習慣が根付いていくことを期待したい。

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