今年の9月1日で関東大震災から100年を迎えた。この震災をきっかけに東京都内の都市計画が定められ、おおまかだが隅田川より東側は工業地区、西側は商業地区とされ、今の墨田区及び周辺の区に製造業が栄え、ねじ・ばね関連をはじめとした企業が今でも多かったり、創業の地となっているのはその名残だ。そして22年前の9月11日にはアメリカの同時多発テロ、これを一つのきっかけに世界におけるアメリカの覇権が揺らいだ象徴的な出来事だったが、既に歴史の教科書に載っており文字通り「十年ひと昔」となりつつある。
テレビ番組で著名人の何世代前かまで時代背景を含めて辿っていく「ファミリーヒストリー」というのがあるが、世界的・歴史的な大事件や災害が日々生活・仕事をしている個人・家族・企業等に対して直接的でなくとも間接的には少なからず影響を及ぼしている事が分かるきっかけとなる。
企業にとって現代ならば東日本大震災でどれだけの被害・影響があって、それがBCP(事業継続計画)を考え始めるきっかけ・見直しの機運を高め、防災用品備蓄・保管の拡充を進めたか?新型コロナウイルス感染症の拡大により会合や展示会の多くが中止を余儀なくされ、当たり前に出来ていた移動の自由に対し強制力こそないが制約され、どうやって対策して凌いできたか?それをきっかけにオンライン会議・展示会の活用が普及したが、それによって分かった出来る事と出来ない事は何か。ウクライナ・ロシア間の紛争によって実体経済の受給と乖離した投機の資金が市場に流れ込んだ影響もあり物価高が起き、それだけでなく日本国内は今までのデフレから打って変わって悪いインフレになって〝カネ〟があっても〝モノ〟が手に入りにくい供給難がどれだけ事業に影響したか?―等を記す事だろう。
ねじ・ばね業界内には改組はあっても合併・分散等を経ずに創業以来の企業形態を保ちながら数十年事業を継続させ、中には100年企業となりえた例も多い。その長い歴史だがIR(決算・企業業績)として数字や主力となった製品・商品については定期的に記録に残す必要は業務としてあっても、その時代に何があって、さらに日々当たり前の感覚な生活習慣・働き方・価値観―まで含め広くてどのようなものだったかは記されづらい。
確かにこれは今すぐ役立つものではなく後々ノスタルジーに浸る為となってしまうかもしれない、しかし企業が生き残ってきた参考にはなるはずだ。社史編纂と言うとなにか閑職のイメージもある。しかし誰かが「コーポレーションヒストリー」「カンパニーヒストリー」を記して残していかなければならない。