実に4年ぶりのリアル開催となった鍛圧機械の見本市である「MF―TOKYO2023」では、(一社)日本ねじ工業協会も特別協賛団体として前回に続き大型ブースを構えて、会員企業の製品を紹介した。
同展示会の花形のひとつであるフォーマーメーカーやファスナー関連技術が並ぶカテゴリースペースの中心にブースを構えた同会が、今回の出展テーマに挙げたのが持続性だ。「ねじ発、サステナビリティ貢献」というキャッチフレーズのもとで、ねじにもできるサステナビリティへの取組みを紹介した。ねじは取り外しができ組み立てられた製品を分解することができる。また圧造加工は切粉を発生させない加工法であり、元々サステナビリティとの親和性が高い技術だ。さらに技術の多くはサステナビリティといった言葉が浸透する以前より、環境負荷の軽減など多様なユーザーの求めに応じて各社が開発してきた技術であり、業界の懐の深さを感じることができた。社会から求められている中で、代表である業界団体が先陣を切ってこのテーマに注目してアピールできた意義は大きい。
具体的には、風力発電や太陽光発電システムといった再生エネルギー機器に使用されるファスナー、部品点数の削減や素材自体の軽量化等による自動車の脱炭素に貢献するねじ、特殊タッピンねじや特殊ナットといった従来の部品から代替することで製造工程を省略できるファスナー、特殊表面処理により素材を長期間腐食させず延命化させることでCO2排出量を削減できる建設インフラ向けのボルト類など各社の多様な技術が紹介された。
ユーザーが製品を採用するうえで環境負荷が低いという点が今後重視されてくるだろう。炭素税や国内排出量取引をはじめ炭素に価格を付けるカーボンプライシングの考え方が強まっているからだ。以前より金属材料メーカーより販売されていた加工後の熱処理が不要となる特殊鋼線についても、ファスナーメーカーからこの材料を使用した新製品が発売されるなど改めて注目度が高まってきている。日本商工会議所では公式ウェブサイトにて自社のエネルギー使用量やCO2排出量を簡単に見える化できる「CO2チェックシート」を無料で提供している。近い将来に「製品1本あたりにどのくらいCO2が排出されているのか」を求められてくる時代を想定して、事前に準備していくことも戦略のひとつだろう。
ユーザーが取引を判断するポイントの中にこれまでの品質・コスト・納期などといったほかに環境負荷やサステナビリティという新たな選択肢が生まれつつあることを商機として捉えることができるかがサプライヤーの今後の成長の鍵とならないか。