ねじ商社はもとよりメーカー(工場)にとっても大事な仕事道具「台車」。動力を使う程ではない、しかし人間が持ち上げて運ぶには難しい・不可能な重量物を車輪の効果で簡単に移動させられる。
時評子が或る企業の新社屋を取材した際、人荷用エレベーターの操作パネルあった「床合わせ機能」スイッチと「上」「下」と書かれたボタン。気になって質問したところ「最近の人荷用は重量物を積載した時にカゴが下がってしまった場合の対策として、位置を上下に調整をする機能が備わっているとの事だが、果たしてこの機能は必要だろうか?」と疑問視していたが、時評子がかつてアルバイトとして大型冷蔵庫やハンガー棚・試着室といった什器を運び出す作業をしていた際、エレベーターのカゴ内と外部の間にある溝や段差はかなりの勢いを付けて乗り越えないとならなかった為、体力のある若者や男性以外が重量物を搭載した台車を使う際には役立つ機能となるはずだ。
移動において車輪は脚と違って効率的だが段差・悪路・斜面への走破性を欠いている。最近ではファミリーレストランの配膳業務にもロボットが使用されスムーズに移動している様を目にするが、建物内の運搬業務を様々なロボットが将来的には代わってくれたとしても、車輪で移動の難しさにどう対処してくかが課題となりそうだ。
このようなロボット普及に関して3月に(一社)ロボットフレンドリー施設推進機構は成果報告(本紙既報)を行ったが、オフィスビル内の飲食物からホテル内の大量のリネン等の運搬等まで事例紹介で多く共通して次のように話していた。
―ロボットは何でも出来る訳でなく人間同様に出来る・出来ないの制約があり、人間が歩いて容易く乗り越えられる段差も車輪で移動するロボットは転倒したり、安全装置が働いて立ち往生する事もある。そして移動だけでなくロボット同士が群体で行動する場合や利用者との接触等、その場その場で複雑な判断が求められる現場や設計開発時にはない想定外な事態にも、ロボットが問題なく活動・活躍できるようにする環境づくりが重要だ―。
この考え方はバリアフリーの思想・設計にも通じるはずだ。
車椅子や足腰が弱く杖を使用しての移動を考慮した床面、なるべくシンプルな動線となるようなレイアウト。ロボットや障害者にとって優しい環境は、健常者にも優しい、働きやすい環境ともなるだろう。健常者も障害者もロボットもそれぞれ得意不得意・特性がある事を考慮して、労働力不足とは云われる昨今、それぞれの人材(ロボットを含む)を活かせる方法を見出して推進する環境・体制づくりが重要なはずだ。