生産性だけでなく消費性も重視しよう

2023年1月23日

 度々取りざたされる日本の低い労働生産性、その一方で提唱されるダイバーシティ―。昨年末、杉田水脈政務官がかつて雑誌の論文において「LGBTは(子供を設けないから)生産性が無い」と記した事が問題となり辞任したが、人は子供を設けなくても労働を通して価値を生産しており、この問題は個人の趣味嗜好・ライフスタイルに対して生産性を論ずる事自体が、人生の目的を収入や資産といった価値観でしか測れていない現れかもしれない。
 そもそも〝生産性〟の向上だけで経済が好調となるのだろうか?可処分所得の増加や購買意欲の上昇といった、さしずめ〝消費性〟も重要なはずだ。
 ロシア・ウクライナ間の紛争や資源価格の上昇、そして円安に端を発する昨今のインフレ傾向に対し大企業が対策としてインフレ手当を始めたが、ねじ業界内でもインフレ対策と名付けていなくても、冬のボーナスの増額、寒冷地の企業では暖房代等で形を変えて従業員の可処分所得の増加に努めている。従業員は生産者であると同時に一人の消費者だ。
 そして労働という生産をするにはモノ・カネ、そしてヒト=時間・体力が必要だが、消費するにも時間・体力が必要だったりする。週休二日制に続いて設けられたハッピーマンデーやプレミアムフライデーといった制度・慣習は消費する為の時間的体力的余裕の確保を目的としているはずだ。
 そして前述の話に戻ると、子供は就業できる「生産年齢」になるまでは消費しかしない純粋な消費者だ。時評子の親戚の子供(乳幼児)を見ていると、ミルク・離乳食をよく食べ、紙おむつ代もかかり、成長に応じた衣服も必要だ。さらに時評子含め親戚が訪問する際に土産として玩具や菓子を持っていく。これだけでも多くの需要を生み出して確実に経済を回していると思わされる。
 逆に保護者からみればモノ・カネだけでなく世話する必要がある為ヒト=保護者の手間・労力も消費している点が、女性の社会進出が進む中で夫婦とも労働か?子育てか?の二者択一に迫られる事、さらに長期的にみれば教育費を含めて多大な負担であり、これらが少子化の一因だろう。
 生産性だけが経済ではない。「需要と供給」の言葉通り、いくら生産(供給)したとしても消費(需要)してもらわなければ経済は成り立たない。
 価値をしっかり生産する一方でしっかり消費するか、当人の消費意欲が低いのなら投資する、相続で誰かに託す、寄付して世の為人の為に使ってもらう―等で、社会は未来の生産に期待しながら今の消費を行って、それを絶え間なく続けて経済の循環が起きている。

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