コスト・品質に替わる環境・持続性を発信しよう

2023年1月9日

 2023年は製品そのものや作り方に対しても、環境性やサスティナビリティ(持続性)がいよいよ本格的に求められてくる機となりそうだ。時評子は、今年を業界全体でファスナー製品の環境性や持続性を広く発信する元年にすることを提案したい。
 新年特集号に合わせた本紙アンケート調査では、ユーザーがサプライヤーに対して重視する傾向の変化を探った。この中の回答で「地球環境やサステナビリティ」が上位グループに含まれる結果となった。従来求められているコスト低減や品質改善を上回る結果とはならなかったが、このニーズが伸びていることはユーザーに変化が生まれていることを表している。
 今年のキーワードには「GX(グリーントランスフォーメーション)」がある。カーボンニュートラルの実現に向けて、社会システムそのものを変革していこうという取り組みで、欧米を起点に国内大手ユーザー企業に浸透してきている。企業単体の取り組みとはならず、製造業の場合は最終ユーザー企業のGXを、サプライチェーン全体で取り組んでいくことが求められそうだ。
 例えば、原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのCO2排出量を換算して、ボルト1本に対する環境負荷を明確化するような、CFP(カーボンフットプリント)の考え方を取り入れなければならないかも知れない。企業によっては、また新しい流れに取り込まれ対応する負担を懸念する声もあるが、前述のようにこれまでのコストや品質に替わり、環境性や持続性という新しい視点から製品の価値を評価してもらう好機とならないか。
 鍛造/圧造製品は金属クズの発生を極力抑えられる工法であるほか、ファスナーは接着剤のような化学薬品を使用せず、溶接のように作業時に高いエネルギーを必要としない潜在的な環境性や持続性を有している。さらに、ねじは製品の組立・解体ができて再利用性が高い。
 関東の中空リベットメーカーは数年前よりこれに注目して、リベットを「エコプロダクツ」製品として地域ブランド認定を受けている。再生エネルギーの活用等によって2030年までにカーボンニュートラルを実現するという高い目標を掲げている大手ファスナーメーカーでは、冷間鍛造を環境にやさしい工法としてユーザーに情報発信していく構えだ。金型メーカーからは、切削設備をメインにしている大手部品メーカーが、持続性ニーズの動きから鍛造設備の導入を検討している情報を提供いただいた。
 環境・持続性を重視する流れを好機と捉えた、新しい視点にたった技術革新の動きや製品の登場に今年は期待したい。

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