ハイテク・デジタルが使えなくなったら?

2023年1月2日

 今年は卯年、前の卯年(平成23年、2011年)は賀詞交歓会等の挨拶でよく「卯年はウサギのように株価が跳ね上がると云われている」と景気への期待が話される事も多かったが、跳ね上がったのは株価でなくプレートと日本列島で、東日本大震災による甚大な地震・津波被害だけでなく原発事故まで発生した。
 その際にハイテク・デジタルを使用したインフラやサプライチェーンが寸断され、日常生活や事業(産業)は高度な技術によって支えられている事、そして交通ならバイパスとなる道や自動車・鉄道等の移動手段の使い分け、エネルギーでも電力なら火力・水力・原子力以外にも再生可能エネルギー、といったいざとなった時の代替手段への重要性を意識するきっかけともなった。
 経済・産業として効率化を求めるのは必然で、その為にハイテク・デジタル化するのは当然だ。
 最近でも或るねじメーカー兼商社のITを駆使した一例で、FAXによる受注を担当のベテラン社員による目視と手作業で入力から、自動的に読み込める方式にしてヒューマンエラーの防止と効率化を図った事例を取材した際「もし停電やシステムの不調が発生した場合は従来の担当が現場復帰して作業するのか?」と質問したところ、「現在担当は退職しており、今後何らかの対策をする必要がある」と話されていた。
 また別のばねメーカーでは従来の電力を使用する設備で製造した場合、使用する電力のエネルギー源として化石燃料で二酸化炭素を発生させている可能性があり、SDGsの観点から付加価値を求めるユーザー向けに人力(手回し)の設備で製造したばねをアピールしているが、これは製造するペースは従来よりも遅く高コストで絶対量を確保する事は難しい。しかしこれは別の目的もあり、もし大規模災害等で電力供給が途絶えた場合や何らかのアクシデントが発生して、それでもユーザーが急遽必要・絶対量が少なくても・単価が高くコストがかかっても構わない場合に供給を維持できるよう対策との考えもあり、もしもハイテク・デジタルの設備が使用できなくなった際、いち早く復旧できる足がかりとなるかもしれない。
 また今まで様々な工場を取材した際、年季の入ったアナログ式な設備を倉庫の奥にしまっている理由を現場担当者に聞くと「多少効率が悪かったとしても急に大量の受注が来た場合に絶対量を確保する為、そして稼働している設備に何らかのアクシデントがあった時に引退しているけど急遽現役復帰してもらう可能性もある」と話していたのを思い出す。
 BCPの観点からも、いざとなった時にローテク・アナログの設備・技術や体制を捨てずに温存しておく必要はありそうだ。

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