国内の新型コロナウイルス感染動向は第8波に突入したとの見方が強まっている。11月より感染者数の増加傾向が続いているが今後年末年始にかけての感染拡大に加えてインフルエンザとの同時流行も懸念されており、インバウンド需要も盛り上がっていた中再び国内経済にブレーキをかけかねない。また既に各所で報じられているが同じく感染者数が拡大している中国は依然としてゼロコロナ政策を堅持しており既に経済活動に大きな影響が出ている。政策の方針転換が無い限り更なる停滞期に突入するのは必至で、世界の景気動向にもマイナスに作用するものと思われる。
そんな中鋲螺業界の景況は元より各需要家の動向に大きく左右されてきたがここに来て一層まだら模様の感が強くなってきている。業界関係者によれば主要な需要家の一つである自動車業界が盛り上がりに欠ける一方で、FAシステム機器関連、建機、半導体関連といった一部の分野については現在の情勢の中では好調となっているという。ねじ関係の生産設備でも圧造機など一部の製品については国内の新規案件については盛り上がりに欠ける一方で、海外については円安の追い風を受けているとの話だ。
また、在阪商社の動向を見ていると現時点で売上については対前年比で1割程度の増加となっている模様だがこれは需要の増加ではなく鉄鋼材料をはじめとした価格の上昇分と受け取る見方が強い。経済を総じてみればインフレの加速等から今後は後退局面に入るとの見方が強く、今年はマイナス材料が目立ち決して良い経営環境とは言えなかったが23年は今年よりも更に厳しい状況になるとの予測も目立つ。ただ「新しい生活様式」が浸透していること、こちらの方が重要であるが国内への生産回帰など産業界がサプライチェーンの強靭化に向けて動いていることからコロナ禍直後のような激しい落ち込みまでには至らないのではなかろうか。
このように景気が厳しい状況にある一方で、インフレを受けた賃上げの機運が高まっている現況を見逃すことはできないだろう。特に中小事業者としては景気の後退局面において価格転嫁の問題に直面しながら人材の確保についても動かなければならず難しい判断を迫られることになる。
政府は22年度補正予算案に賃上げ支援策として賃上げを条件とした控除枠の増額や各種補助金における補助率の引き上げなどを掲げているが価格転嫁の実態に見られるような国内の産業構造に直接切り込むものではなくその場しのぎの感が強い。真に賃上げを促進し、景気の好循環を実現させるならば予算をばら撒くだけでは不十分ではないか。