健全な発展のため、適正利益の追求を

2022年9月5日

 2022年も残すところ4カ月となったが、回復基調が鮮明となっていた昨年とは異なり厳しい状況のまま年末を迎えそうである。感染者数の全数把握を既に止め、経済へと関心をシフトさせている米国とは異なり国内においてコロナ禍は依然として大きな影響を及ぼしている。またロシアによるウクライナ侵攻も早半年が過ぎたが泥沼化の様相を呈しており、現況からの早期解決というのはまず望めそうにない。このような中、ロックダウンの影響が緩和されていくかと思われた中国では深刻な干ばつにより慢性的な電力不足が発生しており、既に報じられている通り企業活動に大きな影響を及ぼしている。このように今年の景況はマイナス材料が多く安定した経済活動を行える基盤が整っているとは言い難い。
 見通し不透明な状況が続いている中、業界各社に業況を聞いて回ってみると売上については「前年比で概ね1割前後の増加」という声が聞かれるが、これは材料をはじめとした経営コストの上昇分が反映されたものと見て間違いないだろう。他方で利益面については売上の上昇分に伴わず苦労しているというのが大まかな印象だ。本紙実施の夏季アンケート調査の結果ではこれを裏付けるかのように、前年比で売り上げが増加したと答えた企業がおよそ4割となった一方で利益面については増加と答えた企業が2割強に留まっており、「増収減益」の傾向を反映している。また本紙8月22日付号で既報の通り、商社団体が実施した価格転嫁に関するアンケート調査によると回答企業のうち半数以上が値上げを認めてもらったが不十分である、もしくは認めてもらったがその後発注量の減少など悪影響が出た、更には値上げを認めない回答があったなど満足に価格転嫁を行えていない実態が明らかとなっている。
 事業の継続と業界の発展、次の世代にバトンを渡す為にも適正な利益の追求は欠かせない。今後国内では働き手の減少に伴い、物流・サービス両面におけるフロントエンドを担ってきた人材の減少が予想される。物流面では「ラストワンマイル」問題が話題となっているが、鋲螺業界でも今後製品を川上から川下まで滞りなく届ける、というこれまで難なく行えていたことに対しても課題が出てくるものと予想される。自動化及びIT化によりモノについてはアイテム数・物量共にその限界を大きく拡張することができたが、人についてはどうだろうか。仮に人に頼る時間が続いたとして、「ねじを届ける」という行為にどのような付加価値を加えられるだろうか。製品価格について今後も需要家に対して適切な対価を求めていくのは当然として少子高齢化に歯止めがかからずモノの需要減が確実視されている中、サービス面での付加価値向上ということについてより深い検討が成されても良いのではないか。

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