コロナ禍を経て強くなれるか?

2022年8月22日

 先日、超音波で液体中に気泡を発生させてばね・ねじ等を洗浄・バリ取り・研磨する設備の取材をしたが、興味深い事にこの設備の部品として使われている超音波発生装置は、不織布マスクの製造においてワイヤーを挟んで重ねた縁部分や耳に引っ掛ける両脇のゴム紐の溶接(接合)にも使用される部品でもあった。
 その企業は今まで中国からこの部品を調達していたが、コロナ禍で中国が「マスク外交」の一環として不織布マスクの製造工場や輸出段階で役人が監視して管理するだけでなく、この部品の輸出自体も管理対象となった影響で調達が滞り設備の製造ができなくなって一時は事業存続の危機を迎えていた。しかし国内の調達先を確保するべく奔走し国産部品を組み込んで使用したところ従来の約1・5倍の性能となって、安定的な調達先の確保という問題解決と同時に改良型新製品としてリニューアルも達成してコロナ禍を経て強くなった良い一例だった。
 また前述とは別の十数名規模の企業で1名が新型コロナウイルス感染症を発症(既に回復済み)した話を聞いたが、会社としては1名が1週間勤務出来ない事態となるだけでも、かなり業務に差し支える旨だった。
 さらに前述とは別の企業、取材の約束をしていたのだが到着したところ担当者が体調を崩して出社できず取材延期となった。これは新型コロナウイルス感染症か分からなかったが、それに限らず誰にだって急な病気や不慮の怪我等、そして本人に限らず家族・親類等に起こるかもしれないのでそれは致し方ない。しかし社員間の相互の連絡・予定の把握をしたり、いざとなったらフォローできる体制づくりは重要だろう。
 リーマンショック等の不景気、東日本大震災等の災害、コロナ禍等を経て強くなる―。スローガンで簡単に言われそうな言葉だが、そもそも「強さ」とは何を指しているのか?売上・利益といった決算等の数字に現れる数字も「強さ」の一つだが、ビジネスモデルが根本から揺らぐような事態に対しても経営を維持できる事もまた「強さ」のはずだ。
 全社員が常に健康かつベストコンディションで働ける事を前提にしてはいないだろうか?忘れがちかもしれないが全社フル稼働出来る事は当り前じゃない。無駄と見なして削ぎに削いできた結果で余力を失って、1人が1日勤務で欠ける、もしくは一時的に製造設備が故障、販売管理システムがダウン、サプライチェーンが滞る等でたちまち成り立たないような組織となってないだろうか?
 数字の「強さ」を求めすぎて、事業で当たり前としていた事が崩れるまさかの事態に対応する為の「打たれ強さ」を失い、結果的に脆弱となってはいけないはずだ。

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