再び感染拡大の足音が聞こえてきた。新型コロナウイルスの新規感染者数は一時全国合計でも1万人を切るまでに落ち着いていたがここに来て再び感染爆発の様相を見せている。専門家は第7波が到来したとの認識を示しており、旅行支援策である「県民割」も延期が決定されている。鋲螺業界にもようやく歓談や交流の場が戻って来たと思っていた矢先、社会は再び活動を制限する機運が高まっており何とも歯痒いばかりである。景気の好材料が全く見当たらない中ただでさえ需要意欲が減退しているのに徒に社会活動を制限してしまっては景気の更なる冷え込みは必至だろう。
コロナ禍が再び感染拡大傾向にあるのに加え、エネルギー資源をはじめとした資材高騰や依然として半導体の供給が追い付いていないなど国内経済はコロナ禍直後に次いで厳しい状況に直面している。また外部を見ても特にコロナ禍から一早く回復したとされる中国の旺盛な需要があった昨年とは異なり世界的に景気後退が懸念されている状況であり、外需による牽引はあまり期待できそうにない。ただそのような中でも半導体関連や建機など好調な分野もあり、製造業の業況はまだら模様の状態が続いている。大幅な円安による輸出促進を期待する声も一時はあったが、そもそも需要が旺盛でなければ円安のメリットは薄くむしろ輸入品の調達コストが上がるなどマイナス材料が目立つのが実情ではなかろうか。今後は加熱したインフレを抑えるべく、米国をはじめ先進諸国の利上げが一巡した後には再び景気拡大に向かうとの見方もあるが、米国における6月の消費者物価指数(CPI)の上昇幅は9・1%となり、1981年以来およそ40年ぶりの高騰となったことからも短期的にはむしろ更なる落ち込みを覚悟しなければならないだろう。
今年も気が付けば下期へと入っているが、業界では価格転嫁への対応もあり早くも来年に期待する声が聞こえ始めている。コロナ禍が発生当初より見られた動きではあるが、こうした停滞期こそ自社の課題に取り組む有益な時間にするべきではないか。鋲螺業界では人材確保を課題とする企業が多いが採用関係者との関係構築や、また最近では自社の魅力を発信すべく採用専用のウェブサイトを設ける企業が増えている。ある装置メーカーでは設計の見直しを進めると共に、目的に仮設施設の製造といった全く異なる分野に挑むなど事業の多角化に努めている。自社の課題に向き合い、実直に改善を続けることで次の好景気に備えたい。