本号から2週に渡り「樹脂向け・樹脂ファスナー技術特集」を掲載する。軽量化や電子制御部品の増加にともない、産業界で樹脂部材のニーズが高まる中で、これに対応する各社のファスナー製品に注目する本特集を企画した。
一方、樹脂・プラスチックは、石油価格の上昇、環境負荷への対策など世界的な課題となっている。リサイクル性や環境負荷の少ない素材の研究など、樹脂素材そのものも変化してくることが見込まれ、これに応じてファスナーの開発も活発になってくる。企業に対しての認定制度などを含む法整備化により、この動きは加速するはずだ。
政府は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)を今年6月に公布した。同法律は2022年4月1日に施行が予定されている。環境省によると同法律の基本方針は次の通りだ。
プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計して、製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した設計であることを認定する仕組みを設ける。またこうした認定製品を国が率先して調達したり、設備支援を行う。
また、ワンウェイプラスチック(使い捨てプラスチック)の使用を合理化して、こうした製品の提供事業者(小売・サービス事業者など)が取り組むべき判断基準を策定。国が勧告・公表・命令を措置できるようにする。
さらに市区町村の分別収集を促進するための容器包装リサイクル法(容リ法)を活用した再商品化を可能にするなど、市区町村と再商品化事業者が連携できる仕組みを作る。
学術機関ではリサイクル技術の研究が進んでいる。東京工業大学と国立研究開発法人科学技術振興機構は、プラスチックを肥料に変換するリサイクルシステムを開発。植物を原料としたプラスチックをアンモニア水で分解することで、植物の成長を促進する肥料へと変換することに成功した。法整備化やリサイクル技術の進化に向けて、いち早くプラスチックリサイクルの環境活動に取り組む企業もある。
大手食品メーカーでは、海辺に廃棄されたプラスチックごみをリサイクルして素材の一部にしたプレスチックのパレットを導入する。
樹脂・プラスチック素材は従来のモノづくり的側面の機能だけではなく、リサイクル性や環境負荷といった新たな環境機能も付加されてくる。
こうした新素材に対応するファスナーの開発やその市場は、優遇措置等のある認定制度が含まれる法律の施行を機に、一気に拡大すると予測できる。