東南アジア地域のコロナ禍が国内製造業に大きな影響を与えている。中でも日系メーカーが数多く進出する国の一つであるベトナムでは感染拡大に歯止めがかからず、ホーチミン市では先月23日からはロックダウンを厳格化させている。東南アジアの感染状況は国際的な調達ネットワークに大きな影響を与えており、同地域を海外生産拠点の集積地としている国内の自動車産業も減産を余儀なくされている状態だ。鋲螺業界に関係するところでは今月初めに圧造機メーカーが部品供給問題を背景とした自社の生産遅延情報について公表しており、その中では東南アジアの感染状況を主因として挙げていた。現下の感染拡大は変異株の一つであるデルタ株がその原因とされているが世界的にはピークアウトの兆しは見えておらず、当面は混乱状況が続くものと思われる。そして今後製造業の幅広い分野において国際的な調達網の見直しが進むのは必至だろう。
今年春先から顕在化した鋼材価格の上昇もまた国内産業に大きな影響を与え続けている。鋲螺業界においては春先から価格改定の動きがあったが、六角ボルトに関しては9月より再び価格改定を決めているとのことである。数ある鋲螺類の中でもスタンダードな製品である六角ボルトが二度目の価格改定を決めた事で今後は一度目の価格改定同様他の製品についても追随する動きが出てくるものと思われる。鋼材価格に関しては秋以降も強含みで推移するとの見方が強く、当面は価格改定が業界の課題となるものと予想される。また、先が見えないコロナ禍が続く中では設備投資の話題を聞く機会が少なくなっていたが鋲螺業界を見ていると大手商社による物流拠点の新築あるいは増築、倉庫能力増強といった話が出てくるようになった。アフターコロナを早くも見据えて中長期的な視点で動いているというところなのだろう。動向を注視したい。
なお春先動きがあった価格改定の際、付帯する諸業務が大きな負担となるため値上げ幅と作業負担を天秤にかけた結果次の機会が来るまで呑み込むことにした、という声が複数聞かれた。一方、販売プラットフォームのデジタル化を進めていた企業では情勢に応じて柔軟に対応することができたとのことである。鋼材市況がリーマンショック前後を思わせる極端な値動きを見せている中、自動で処理できるデジタルデータの方が状況に対して機動的に対応できるのは間違いない。コロナ禍により日本のIT活用は飛躍的に進んだとされているが、先行き不透明で見通しの悪い“緊急事態”が続くなかリモートに留まらずより踏み込んだDXを考えていく必要がある。