政府は本日をもって三度目の緊急事態宣言を解除するとしている。都市部の新規感染者数も下火となっており、全国の感染者数についても一日あたり100人を下回る日を見かけるようになってきた。これは二度目の宣言が解除された時期の水準に相当する数値であるが、もう何度も経験してきたように新規感染者数が減ったからといって再拡大のリスクが潜んでいることに変わりはない。しかしこれまでと違い今後はワクチンの存在がある。高齢者を筆頭に一部企業においても職域接種という形で接種が進められており、他の先進国に遅れをとっているかもしれないがコロナ禍のゴールに向かって一歩ずつ着実に進んでいると言えるのではなかろうか。コロナ禍の影響は続いており、「密」回避のため人が集まる催しはことごとく延期もしくは中止といった状態が続いている。大阪の業界団体では今年も毎年恒例の野球大会を中止するなど我慢の時期が続いているが、この夏を超えれば見えてくる景色もまた変わってくるだろうか。
ただコロナ禍の状況に改善の兆しが見えて来た一方で、景況感については春先頃まで好調が続いていた自動車業界にブレーキがかかったことから雲行きが怪しくなっている。かねてから報じられてきた半導体不足の影響が本格化したことから自動車メーカー各社が減産せざるを得ない状況に陥っており、解消までの間停滞を余儀なくされることが予想される。また半導体不足の影響もさることながら、中国の鉄鋼産業及びその政府政策もまた産業界に大きな影響を及ぼしている。関係筋によれば中国は5月より多くの鉄鋼製品に対する輸出税の還付措置を廃止しているのに加え、6月からは「生産能力置換実施弁法」の施行を通じて特に付加価値の低いとされる鉄鋼製品の輸出を抑制すると共に鋼材生産時の二酸化炭素の排出削減を図ろうとしている。このうち輸出税の還付措置廃止については主に鋼板やフラットロール製品が中心で、線材についてはめっき線が対象に含まれている。また鉄鋼製品としては主に管製品が対象となっている。今や中国は世界経済に対して極めて大きな影響力を有しており、鋲螺業界においても周知の通り輸入品の大半が中国製品であるのに加え、政策方針についても同国の環境規制方針からめっき業者が突如操業停止を余儀なくされ、ねじ類の輸出に影響が出た時期があるなど決して無視できる存在ではなくなっている。鋲螺業界だけの話ではないだろうが、今後は更に「チャイナ・リスク」を意識していく必要があるだろう。