刷新し稼げる国へ 教育DXの機運

2021年4月19日

 厚労省が発表した2月の実質賃金は1年ぶりに微増となったものの、名目賃金(1人当たりの現金給与総額)は11カ月連続の減少となった。コロナによる経済活動の冷え込みが要因として考えられる。
 日本経済は失われた30年と呼ばれ、主要先進国の多くが賃金を上昇させる中、日本はいつの間にか低水準となっている。給与が下がる→良いものが買えない→良いものが売れない→良いものを作らない→良いものを作らないから儲からない→給与が下がる―という当たり前の図式が突き付けられる。
 バブル以降、企業は賃上げよりも内部留保に分配の比重を置いた。個々の企業としては身を守るための正しい選択なのだが、社会全体とした時に、負のスパイラルに陥る原因となったのかも知れない。
 また、IT化への投資やデザイン力で先進国に後れを取り、世界に打って出る高付加価値製品を生み出しにくくなっている(2000年代初頭、ウォークマンは瞬く間にiPodに置き換わった)。高付加価値製品が創れないと、労働生産性(従業員1人あたりの粗利益)も下がり、さらに賃金に分配がなされなくなる。
 より良いもの生み出し、より高く売れる国へ、さらに、デジタルで他国に後れを取らぬよう刷新が望まれる。教育の現場ではGIGAスクール構想として児童生徒1人につき1台情報端末が使える環境が整備され、この程ほぼ全ての自治体で環境整備が完了したと文科省が発表した。さらにプログラミング教育の必修化もある。
 公的なデジタル教育を受けた世代が社会に出てくるまであと10年はかかる。それまでにオールド世代は土壌を作り、潔く若い者の挑戦に金を出す、挑戦を応援する、必要な人脈を提供する―といった態度が求められるのではないか。
 また、高校家庭科で資産形成の授業が予定されている。貯蓄の無い世代は90年代以降右肩上がりで増加傾向にある。一方で、日本人は金融資産に占める預貯金の比率が高い「貯金好き」な国民性でもある。
 日銀によると昨年末時点の個人金融資産は1948兆円と過去最高だった。だが、アメリカの個人金融資産は1京4000兆円と途方もない数字に上る。最大の経済大国であり、何といっても資産に占めるリスクマネーの割合が高いことが挙げられる。
 社会保障制度の異なるアメリカと単純に比較すれば良いというものでは無いが、マネーリテラシーを高めるための金融教育が導入されることは歓迎されることではないだろうか。手数料ビジネスの性格が強い金融商品や、ぼったくり商品を掴まされるのは知識が乏しいことに由来するからだ。

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