ユーザー業界では直近の四半期業績を増収増益に転じる企業が目立ち始めてきた。昨年から続くコロナ禍の落込みから徐々に回復してきている向きもあるが、企業によってはコロナ禍を追い風に需要をつかむ動きもある。
食品加工機械の分野では、巣ごもり消費への対応と健康志向の需要に対応する動きが強まっている。新型コロナウイルスの感染拡大により、同分野の需要先のひとつである大手飲食チェーンの苦戦が見られるが、一方で外食を控えてテイクアウトやデリバリー等を利用した巣ごもり飲食需要は高まっている。菓子や飲料もこうした需要に牽引されたほか、人気アニメとのコラボレーション商品の販売が大きく伸びるなどして、これに乗じて一部の食品加工機械の需要も伸長した。
食品加工機械を主要ユーザーとする加工業者では、こうした需要に後押しされ売上が倍増している。菓子などはSNSの普及により美味しさだけでなく、「写真や動画に映える」商品が人気になっており、同一商品でも味や見た目・色を変更した新商品を続々と発売する動きも見られる。こうした新商品を製造する食品工場は、ラインを新設するというよりは、既存ラインに一部の設備を追加、入替えして対応すると言い、前述の加工業者は、こうした設備需要が自社への注文に大きく影響しているのではと推測している。
昨年より続くコロナ関連需要の反動減をすでに警戒する動きも見られる。コロナ禍で需要を大きく伸ばした分野のひとつが自転車だ。健康志向の高まる昨今でエクササイズとして注目されてきたほか、新型コロナをきっかけに感染リスクの少ない交通手段として世界的に需要が一気に高まった。ファスナー業界でも昨年より自転車部品メーカー向けの堅調な需要を各方面で聞くことができたが、今年に入り供給過多からの反動減に備える必要があるという声も一部で聞かれた。一時の需要に惑わされずアフターコロナも見据えた冷静な見解といえるだろう。
現在、好調な分野の業績を分析してみると、昨春は他分野と同様に総じて大きな落ち込みがあり、そこから新しく生まれた需要の波にうまく乗りながら業績を徐々に回復させてきた企業がほとんどだ。ビジネス環境をも変化させてしまった今回のコロナ危機だけに、ただ経済回復を耐え忍ぶのではなく、今だからこそできる戦略を打ち出す姿勢が企業は求められてくる。そして既にコロナ需要を大きく掴んでいる企業についても、目の前の受注のみにとらわれず次の一手を読み解く力が必要となりそうだ。