女性の活躍が国益に ビジネスと人権

2021年2月22日

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の女性蔑視と受け取れる発言が国内外に大きな波紋を起こした。菅総理はこの発言について「国益にとっては芳しいものではない」と自身の考えを述べた。確かに人材確保が難しい局面にあって、女性の活躍が活かせないとなると国益としては明らかなマイナスだ。
 2018年、東京医科大の入試で女子の得点が意図的に下げられていたことが発覚し、性差別が厳然として存在することが浮き彫りとなった。実際、女性は出産などのライフイベントで現場を離れることが多い。激務として知られる医療現場で、そのカバーをする余力が無いというのが理由の一つとされる。しかし、マネジメントの煩雑さを理由にして入口を狭めるというのでは、怠慢あるいは思考停止と批判されても仕方ないのではなかろうか。
 「働きたい女性が活躍できる労働環境の整備」が求められている。時評子がねじ業界を取材する中で、女性社員が製造仕事に勤しむ現場に立ち会ったことが何度かある。ある現場ではクレーンでドラム缶をさばく姿が印象的だった。自ら製造を希望するということは、それだけやる気があるということ。逆に男性の事務仕事への登用もしかりで、オートマチックに性別によって所属を分けてしまうのでは無く、本人の希望と適正に応えられる環境づくりが会社の競争力を高めることに繋がるのではないだろうか。
 業界団体の会合で会場を眺めると、良い悪いは別にして男社会であることが一目瞭然で分かる。立ち止まって考えると、これまで会議等で“女性ならではの視点”を取り込んでこなかったのだとしたら、それは機会損失と言えるのではないか。
 話は変わって米・バイデン大統領は、中国による香港での民主派弾圧や新疆ウイグル自治区での人権侵害について、習主席に対して直接懸念を伝えた。また、クーデターによる混乱が生じているミャンマーでは、ロヒンギャに対する人権侵害が指摘される。
 そもそも人間という生物に「人権」というものがある訳では無い。作り出した虚構であり、しかし、共有しておいた方が平和に繋がる虚構として国際社会を生きる我々の中に息づいている。そんな人権を信じる我々は、「人権を信じていないものにとっては侵害を指摘されても理解できない」ということを理解する必要があるのではないか。
 政府は昨秋、「ビジネスと人権に関する行動計画」をまとめた。SDGsの達成には、人権の保護・促進が重要な要素だと位置付ける。道理を欠いたビジネスが長続きしないことは先達の商人たちが口を酸っぱくして言っている。

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