EVシフト、次世代技術を探る動き

2020年12月21日

 静岡県沼津地域の自動車向けファスナーメーカー各社では、秋口より生産が上昇基調に転じている。
 新型コロナ感染拡大の影響で春頃から最も深刻な需要の落込みを見せたのは自動車向けファスナーメーカーだった。取引先が自動車に集中しているメーカーでは5月から8月あたりの一部の月で、売上が5割から7割減少した企業も少なくない。下降基調から変化が見え始めたのは10月頃だ。生産調整していた自動車メーカー各社が比較的早く生産体制を戻し、中国や北米、インドといった自動車の海外市場の消費も回復する中、発注を控えていた取引先部品メーカーや商社の在庫がなくなり、ファスナーメーカーへ急激な発注が始まっているもようだ。沼津地域のファスナーメーカーも同様の動きで、10月の売上は前年比で約10%減まで回復、足元の12月は前年比プラスに転じている企業もあった。急激に回復する一方で、これまで進められてきた国内高炉メーカーの生産調整も原因してか、鋼線の供給に遅れが生じている事案を懸念する声も各社で聞こえた。
 需要回復という面では明るい兆しが見える中で、自動車向けファスナーメーカーが課題としているのがEVシフトによる部品点数の減少への対応だ。あるメーカー社長は「当社は足回り部品が主力だが一部エンジン関連も供給している。こうした部品はEV化では当然、完全になくなるため、その分を補完する取組みが必要になる」と危機感を示す。
 EVシフトへの流れはコロナ危機前に比べて加速している。世界各国の流れに追従するかたちで政府は2030年代半ばにガソリンエンジンのみで動く車の国内新車販売をなくす目標を掲げる見通し。除外対象にHVは含まれないもようだが、自動車メーカー各社が内燃機関を持たない自動車の開発を当初の計画よりも加速させるきっかけになることは間違いだろう。CASEといった次世代技術のニーズが高まり、これまでの部品サプライヤーとは違うプレイヤーの参入も増えて自動車部品市場は新しい戦場となる。
 こうした中、ファスナーメーカーの中には新しい技術のニーズを直接自動車メーカーから探ろうとする動きが見られる。静岡県浜松市にある次世代自動車センター浜松では、大手完成車・部品メーカーが求めている技術を中小サプライヤーに共有する場として、県内のファスナーメーカーも各社が参加している。
 中小サプライヤーにとって次世代の自動車技術には何が必要で、自分たちの技術が何に活かせるのかが未だ見にくいのが現状だ。こうした機関などを通してニーズの共有化が進めばファスナーメーカーの可能性も広がるはずだ。

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