「台湾国際ファスニング見本市」を振り返る

2018年6月4日

 台湾ねじ産業は現在のところ好況であるようだ。先に高雄で開催された「2018国際ファスニング見本市」では、近況について中国のほか特に欧米が好調であると答えた企業が多かった。一方日本についてはグローバル化に伴い「アウト―アウト」の性格を強めていることも一因であると思われるが、話題に上ることは少なくどことなく“蚊帳の外”であるように感じられた。
 台湾ねじ工業協会(TIFI)の蔡理事長は同展の初日に行われた「グローバルファスナーサミット」において、台湾ねじ産業は昨年対前年比で3割の売上増となったと話していた。その中でも自動車向けファスナーの需要が近年増加しており、前年は全体の32%を占め、今後もさらに成長する見込みであるとのことだった。会場では主に欧米カーメーカー向けにファスナーを供給しているメーカーが多く見られ、標準品からより高度な技術が要求される分野へとシフトしつつある台湾ねじ産業の姿を伺わせた。
 関係資料によると、特に輸出が大半を占める台湾ねじ産業は近年国際的な競争の激化を受けて数量・金額共に減少傾向にあった。しかし昨年(2017年)は国際的な金融環境の変化を受けて特にアメリカ、EU、日本への輸出が伸びる結果となった、とのことだ。ネガティブな要因として為替レートのほかEUによる中国製ファスナーに対するアンチダンピング税の撤廃に触れていたが、会場において影響を尋ねたところAD税の撤廃を差し迫ったリスクと捉えている関係者は少なかった。中でも自動車向けファスナーについて、ある台湾メーカーは「品質の点においてまだまだ台湾に優位があるのではないか」と答えた。
 内容としては検査機メーカー、機械メーカーによるIoTに対応した各種設備の展示が目立った。前号の時評においても触れた通り、IoTはより高度な生産管理を実現する技術として今後ますます注目されていくのではないのだろうか。あるメーカーに話を聞いたところ約1年前より自社でプログラマーを抱えてIoTに対応したシステムを作っているとのことだった。ねじ商社が流通システムを内製化するケースは複数見られるが、メーカーが社内の生産設備に合わせてシステム開発を行うのは日本でも珍しいケースとなるのではなかろうか。
 近年国内においては各業界団体による海外視察の機会が増えているほか、前号で報じたように日本ねじ研究協会は現在ドイツの業界団体との連携を模索している。国内の情勢だけではもはや動向の把握が難しい昨今の経済情勢にあって、グローバルな視座を保ち続けるためにも海外に目を向け続けることが今後ますます重要になってくるだろう。

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