中小企業の求人活動、誤解を解いて心を掴もう

2018年4月2日

 人が採用できないという嘆きの声を多くの企業で聞く。今は就職希望者が有利な売り手市場と言われているが、果たして手立ては皆無であろうか。
 確かに人材確保は難しくなっている。好景気により大手企業が人を総ざらいに採用しているのだから、中小企業が募集段階で人が集まらないという状況に陥っているのは容易に想像できる。では、人はなぜ大手企業に集まるのか。この理由をあえて安易に考えてみたい。人生において安定した収入を得たいという人の心が、容易に安定していると想像できる大手企業を就職先へと向わせていること。また、名の知れた大手企業に入りたいというブランドへの憧れがそうさせていること、である。
 前者の収入については、会社の規模を問わず、独自の強みを活かして安定した収益を得ている中小企業は当然のことながら多く存在する。大手企業が瞬く間に瓦解する光景を人は見てきているし、ブラック企業という言葉も生まれた通り、大手だから何もかも良いというものではないことを人は分かり始めている。しかしながら、中小企業への理解はというとまだまだ浸透していないようだ。中小企業はもっと、創業数十年以上の長きに渡る安定した実績を求職者たちに知ってもらう必要がある。また、創業間もない中小企業も、自社の製品が持つ収益力と将来性を分かりやすく説明することが大切だ。
 では、ブランド力はどうか。特定の業界の中では企業の歴史や技術の高さからブランド力の高い中小企業は数多く存在するが、ブランドをただ単に「名の知れた」という意味で捉えるならば、一般から見れば知られていないのが普通である。しかし、本来ブランド力とは取引先に販売する時、ここの品なら安心できると思わせる品質面・技術面・サービス面での信頼性のことであり、ファッションではない。中小企業は、このことを求職者たちに理解してもらえるよう解説する必要がある。自社の真の意味でのブランド力を訴え、良さに気付いてもらうことが大切だ。
 中小企業が人を採用しにくいのは、ほかにも理由があるかも知れないが、しかし、多くの人の心理を考えてみるうえで、安易な理由が大手企業に人が流れる「きっかけ」になっていることは否定できない。
 中小企業は、そうした「きっかけ」について、まずは誤解を解くことから始めなければならない。それまで大企業へ目が向いていた人々や自社を知らなかった人たちにも興味を持ってもらえるよう、就職説明会、インターン、求人広告、ウェブサイトなどにおいて、収入の安定性と真のブランド力、この2点に重きを置き、魅力を伝えて心を掴もうではないか。

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