今年は、昨年に引き続き東京五輪の関連施設や都心の再開発需要にともなう建設工事が進む。また製造業では人手不足の解消を目的にロボットなど省力化を中心にした設備投資が堅調に推移する見通しだ。
これにともない鉄鋼製品の需要も比例して増加が見込まれる。(一社)日本鉄鋼連盟の発表によると、2018年度の粗鋼生産は17年度を上回る見通しだ。建設業界では好調な土木が前年度から横這いで推移するほか、大型施設など非住宅関連の増加による需要増を予測している。世界的な需要も高まり輸出も「やや上回る」としている。
建設需要にともなう鉄骨需要も前年を上回る高水準で推移している。旺盛な需要が予測されている中、昨年から続く鉄鋼関連の原料の上昇が注目される。
主原料となる鉄鉱石の物価指数は、昨年1月に80・2ポイントだったのが、7月に最も高く上昇して117・1ポイントを示した。これは前年比で114・9%増と倍増した形となっている。最新発表の昨年11月を見ても91・8ポイントと前年より高い水準で推移している。このほか、本紙の「機械・工具・資材面」で毎週連載で分析している通り、銅鉱、ニッケル鉱、亜鉛鉱、モリブデン鉱、鉄くず、銅・銅合金くず―も軒並み上昇しており、材料価格について今年も引き続き注視していく必要があるだろう。鋼材価格の上昇は、中国の過剰生産能力の削減が進み、中国国内で余剰製品が減少していることも要因のひとつと言われている。
昨夏に本紙が分析したアンケート調査では、仕入れ価格が「増加した」と答えた企業は8割を占めた。一方、この価格上昇に応じて「転嫁した」企業は6割に留まり、製品価格に転嫁するという課題を改めて浮き彫りにした。
仕入れ価格の上昇と併せて昨年は、一部で線材が入りにくいなど材料のタイト感を懸念する声も強まった年だった。鉄鋼メーカーのデータ不正問題もあり、ファスナー用の鋼線に問題はなかったものの、ユーザーからの問い合わせに奔走した企業も多かった。グローバル化された社会の中で、あらゆる要因が複雑に重なり受給バランスが即座に変動するリスクが今後もさらに高まる。
数値では同じ仕様の材料でも上流の鋼材メーカーや伸線メーカーの違いで、加工仕上がりの差も繊細に感じるとることができてしまうのがファスナー業界だ。価格変動や供給リスク、そして品質と、これらをいかに想定してコントロールできる力もますます求められる。