減速の中国経済、輸出や材料価格に影響

2020年1月12日

 中国経済の減速により輸出向けを中心にした製品の需要が落ち込んでいる。景気の先行指標と言われ、中国向けが北米に次ぐ2位となる工作機械受注の8月は884億9000万円と2013年4月以来となる900億円割れを示した。米中貿易摩擦による設備投資環境の悪化が主な要因とされている。
 工作機械の中国向けを見ても、受注額は112億9000万円と前年比40・5%の減少。今年の最低額を記録した。
 完成品に使用される材料需要の動きも鈍い。8月の伸銅品生産量は前年比10・8%減の5万3457㌧(速報値)と今年初めて6万㌧を割っている。スマートフォンや半導体の不振による需要低迷、また工作機械や自動車用部品が停滞していることが、銅需要の減速を加速させていると見られる。
 鋼材需要の減速観測が強まったことで鉄スクラップの取引価格も下落している。今年の春から値下がり基調ではあったが、米国の対中制裁関税が9月に発動されたことにより、中国景気がより落ち込むとの観測から、中国への輸出が多い日本の鉄スクラップ価格に影響して、さらに下げ足が速まっている。
 鉄鋼材料の価格が落ち込んでいる中、再び中国の鉄鋼の過剰生産の懸念が指摘されている。リーマンショック(2008年)をうけて中国政府が行った経済対策で、中国の粗鋼生産は内需を4億㌧も上回る生産能力を抱え、過剰生産分が海外に流入して鉄鋼価格の世界手的な下落を招いた。これを反省に中国政府は過剰生産能力の削減や非合法設備の排除に取り組んできた。
 しかし、米中貿易摩擦による中国経済の落ち込みにより、ここにきて過剰生産能力の削減よりも景気対策による需要下支えを優先する動きが見られる。2018年の粗鋼生産量は過去最高を記録した。中国景気がさらに落ち込めば、過剰生産分の安い材料が海外に流入する。すでに1月―7月の鋼材輸入量は前年比4割増で推移している。
 本紙既報の通り、1月―7月の中国向け鉄鋼製ボルトの輸出額は前年比13%減の172億円、数量で同19%減の2万4900㌧と減少。鉄鋼製ナットは金額で同13%減の75億7100万円、数量で同13%減の8914㌧。ねじは、金額で同14%減の43億8600万円、数量で同14%減の2651㌧だった。日本のファスナー企業の多くも巨大な中国市場に依存している。
 中国政府は短期的な景気刺激策にとらわれない、米中貿易摩擦の早期妥結と長期的な視点をもった景気対策の実行が求められる。 

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